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彼女の幸せ僕の幸せ
しおりを挟むアルバートは、あの夜会でマリーリアから良い返事を貰ったものの、無理矢理に、はたまた言わざるを得ない状況に持っていってしまった事で、マリーリアに後悔をさせているのではないかと気掛かりでいた。二人でいる時は可愛らしい反応を見せてくれたり、顔を真っ赤にして照れるような事もある。しかし、兄であるヴィンセントを長年慕っていたマリーリアは、単に男に免疫がないだけなのではないかと思っていた。
「殿下、随分と自信なさげですね?」
「マリーリアは・・・元は兄に憧れていただろう?僕があんな事をしなければ、もしかしたら兄上と恋仲になっていたかもしれない。未だに良かったのだろうかとね・・・」
「アルバートよ、良かったのだろうかではない。良かったと思わせねばならん。私のクリスティアもずっとディアルド・・・ウィルフレッドの父に恋をしておった。自身が妻になると信じて疑わぬ様子もあった。だが、最後には笑ってくれた。私はその笑顔を今でも覚えている。だからアルバートよ、マリーリア嬢に後悔をさせるな。お前と一緒になって、あの時、その場の空気でそうなってしまった事で、今の幸せがあるんだと思ってもらえるように、これからが正念場だぞ?弱音を言っている場合じゃない」
昔の自分を見ているようで、国王レオナルドは息子に頑張れと心から叱咤激励していた。
「そうですね。マリーリアには幸せになって欲しい」
「殿下それは違います」
「?」
話しを聞いていたウィルフレッドが間髪入れず口を挟んだ。
「違うとはなんだ?」
「マリーリア嬢だけが幸せではいけません。殿下も幸せになるんですよ。二人で幸せになるんです」
「お前が言うとなるほどなと思う。確かにそうだな。二人で幸せになりたい」
「はい。自分ばかり幸せでもいけない。相手だけが幸せでもいけないんですよ。お互いに幸せだと確認しあえてこそ、さらに仲が深まると言うものですよ」
「そうか・・・僕もまだまだだったな。マリーリアにではなく、マリーリアと幸せになりたい・・・だな」
「そうです」
アルバートはその言葉を噛み締めていた。マリーリアには幸せになって欲しいという気持ちは大きい。だがそこに、自身もという考えは持っていなかった。自身も幸せである事が大事なのだと、また一つ学んだようで、納得したとばかりに嬉しそうな顔をしていた。
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