騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

文字の大きさ
上 下
350 / 544

彼女の幸せ僕の幸せ

しおりを挟む


 アルバートは、あの夜会でマリーリアから良い返事を貰ったものの、無理矢理に、はたまた言わざるを得ない状況に持っていってしまった事で、マリーリアに後悔をさせているのではないかと気掛かりでいた。二人でいる時は可愛らしい反応を見せてくれたり、顔を真っ赤にして照れるような事もある。しかし、兄であるヴィンセントを長年慕っていたマリーリアは、単に男に免疫がないだけなのではないかと思っていた。


「殿下、随分と自信なさげですね?」

「マリーリアは・・・元は兄に憧れていただろう?僕があんな事をしなければ、もしかしたら兄上と恋仲になっていたかもしれない。未だに良かったのだろうかとね・・・」

「アルバートよ、良かったのだろうかではない。良かったと思わせねばならん。私のクリスティアもずっとディアルド・・・ウィルフレッドの父に恋をしておった。自身が妻になると信じて疑わぬ様子もあった。だが、最後には笑ってくれた。私はその笑顔を今でも覚えている。だからアルバートよ、マリーリア嬢に後悔をさせるな。お前と一緒になって、あの時、その場の空気でそうなってしまった事で、今の幸せがあるんだと思ってもらえるように、これからが正念場だぞ?弱音を言っている場合じゃない」


昔の自分を見ているようで、国王レオナルドは息子に頑張れと心から叱咤激励していた。


「そうですね。マリーリアには幸せになって欲しい」

「殿下それは違います」

「?」


話しを聞いていたウィルフレッドが間髪入れず口を挟んだ。


「違うとはなんだ?」

「マリーリア嬢だけが幸せではいけません。殿下も幸せになるんですよ。二人で幸せになるんです」

「お前が言うとなるほどなと思う。確かにそうだな。二人で幸せになりたい」

「はい。自分ばかり幸せでもいけない。相手だけが幸せでもいけないんですよ。お互いに幸せだと確認しあえてこそ、さらに仲が深まると言うものですよ」

「そうか・・・僕もまだまだだったな。マリーリアにではなく、マリーリアと幸せになりたい・・・だな」

「そうです」


アルバートはその言葉を噛み締めていた。マリーリアには幸せになって欲しいという気持ちは大きい。だがそこに、自身もという考えは持っていなかった。自身も幸せである事が大事なのだと、また一つ学んだようで、納得したとばかりに嬉しそうな顔をしていた。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!? 本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

これは未来に続く婚約破棄

茂栖 もす
恋愛
男爵令嬢ことインチキ令嬢と蔑まれている私、ミリア・ホーレンスと、そこそこ名門のレオナード・ロフィは婚約した。……1ヶ月という期間限定で。 1ヶ月後には、私は大っ嫌いな貴族社会を飛び出して、海外へ移住する。 レオンは、家督を弟に譲り長年片思いしている平民の女性と駆け落ちをする………予定だ。 そう、私達にとって、この婚約期間は、お互いの目的を達成させるための準備期間。 私達の間には、恋も愛もない。 あるのは共犯者という連帯意識と、互いの境遇を励まし合う友情があるだけ。 ※別PNで他サイトにも重複投稿しています。

処理中です...