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騎士団長の執務室

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ウィルフレッドは十日ぶりの王城に深呼吸をして足を踏み入れた。まだ早い時間、騎士団長に与えられる執務室に入ると、机の上には何も乗っておらず、代理を務めていたアルバートの優秀さが垣間見えた。


「流石だな・・・」

「それは僕に対する褒め言葉かな?」


ポツリとこぼした一言にまさか返事が返ってくるとは思わなかった。驚いて声のしたほうを振り返ると、入り口で腕を組み壁に寄りかかっている第二王子アルバートがいた。


「殿下、おはようございます。この度はご迷惑を」

「迷惑かけたのはこっちだろう?気にするな」

「しかし」

「まぁ、いいじゃないか。僕はウィルフレッドが城に再び足を運んでくれただけでよかったとすら思ってるんだから」


アルバートは壁から身体を離すと、ゆっくりと歩きウィルフレッドへと近づいていく。


「夫人と離れたくなくて、もう騎士団長はやらないと登城は拒否するんじゃないかってね」

「・・・まぁ、あり得なくはないですね。昨日まではそう言ってシアを困らせてましたから」

「ん?昨日、何かあったのか?」

「まぁ、正確には今朝ですが・・・」

「どういう事だい?」


アルバートは真意を急かすように尋ねる。


「昨日、シアと話をしました。騎士団長を辞めたいと。他の男連中は皆、愛しい妻との時間を持てているのに、どうして俺だけ城にまで行って、激務に追われなければならないんだと。ですが話していくうちに言われたんです。辞めたいと言い続けているうちは俺がずっと騎士団長のままだと」

「そうだろうな。辞めると決めたのなら次の行動にでなくてはいつまで経っても夢物語だ」

「えぇ、ですから、後継を育てる事に尽力する事にしたのです」


アルバートはゆっくりと頷きウィルフレッドの目を見て聞く。


「それで?誰にするかは決まってると?」

「はい、レイバンの事もあって副騎士団長ですら不在。当然と言ってはなんですが、以前より目をかけておりましたし、第一隊隊長のアイオロスをと」

「うん、いい選択だろう。ウィルフレッドが不在にしている間、彼の人となりを見ていたが申し分ないね。ただ副騎士団長に抜擢する人材が心もとなくはあるところだが・・・」

「それには一つあてがあります。まぁ、本人の意思次第ではありますので今は名は言えませんが」

「まぁ、ウィルフレッドが見込んだ相手に間違いはないさ。レイバンだって、騎士としては優秀だったんだから」


アルバートは少し気遣うような様子を見せ、申し訳ないと言わんばかりの表情を見せた。


「それに関しては俺もそう思ってます。だがあいつは騎士としての道を踏み外しました。レイバンの処遇に関しては陛下に一任して頂いております故、これから提案に向かおうと思います」

「そうか、せっかくだし、僕も同席させて貰おう」

「はい」


返事をしたウィルフレッドの目にはもう迷いはなかった。





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