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休暇十日目⑧気になっている事
しおりを挟むウィルフレッドは身体を起こすと、レティシアを後ろ抱きにして再度寝台に横になった。
「ねぇ、マクシミリオン様とレイバン様の事、どうする事にしたの?」
「まだ決めかねてる。レイバンにはイズヴァンドに行ってもらうのもいいかとは思ってるが、現状がアレではさすがに暮らしにくいだろうな」
「そうよね・・・隣の領だからクレイドル様に後見を頼めないかしら」
「うん・・・いいかもしれんな。陛下に進言してみるか。ソハナスの宰相殿の件もあるしな」
「そうね・・・」
「マクシミリオンについては、王都には居づらいだろうし、その点では西も東にもやれんしな。それこそクレイドル殿に預かって貰うのはどうかと考えていたんだ」
「そうなの?」
「あぁ、ソハナスの動きも注意しておかなくてはいけない。それで言うと、殿下の側近をしていたんだ、地頭は悪くない。もしもに備えて、参謀的な役割ができれば、あいつの立場に価値を見い出せるんじゃないかと思ってな」
「いいかもしれないわ」
「それと、コルテオに北の辺境に常駐してもらいたいと思っているんだ」
「コルテオ様に?」
「あぁ、あいつには通信機器や研究面で、大いに能力を奮って貰いたいんだ。王都ではあいつの力を重要視する貴族が少ない。だが、今回の事件の事で、クレイドル殿も師匠もコルテオの事を買ってくれている。そんな環境であれば、コルテオも伸び伸びとやれるんじゃないかと思ってな」
「いい考えかもしれないわ。コルテオ様さえ良ければだけど」
「あいつは侯爵家の次男だからな。継ぐ爵位がないんだ。家に未練もないからな。頷くんじゃないかと思ってる」
ウィルフレッドは明日からの事を頭に浮かべていく。考える事、やるべき事、さまざまな事が待っている。共に長い時間を過ごした副騎士団長だったレイバン。同じ公爵子息として国に貢献するはずだったマクシミリオン。次期騎士団長として育てようと思っているアイオロス。忙しくなるなと思いながらも、目の前の愛しい妻との時間が減ることに、やはり気分が塞いでしまう。急に静かになったウィルフレッドに対してレティシアは最大の疑問を投げかけた。
「ねぇ、私達の初夜っていつかしら」
その一言にウィルフレッドの身体がビクリッと反応した。結婚式を挙げれなかった二人は、初夜どころではなく、ウィルフレッドの精神状態もあいまって、十日間は二人でいろんなところに出向いた。時々そういう事になりかけても、最終的に子を作る行為はしない事。レティシアはウィルフレッドがまだ完全には心が癒えていない事に気付いていた。
「いろいろ片付けたら・・・かな」
「じゃあ、それまでお預けね」
くすくすっと笑うレティシアを強く抱きしめて、ウィルフレッドは眠りについた。寝付けないかもしれないと思っていたが稀有な事だった。レティシアの寝息が聞こえてくると、眠っている間はどこにも行かない事、そして抱きしめている暖かさにいつのまにか眠ってしまっていた。安心というのが、今のウィルフレッドには一番の薬かもしれない。
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