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休暇十日目⑦次の騎士団長には
しおりを挟むウィルフレッドとレティシアは、寝室に戻ると寝台へ横に並んで腰掛けた。
「本当に俺は馬鹿だな・・・」
「どうしたの?」
「逃げる事ばかり考えていた。辞めたい。辞めれば時間は自由になるし、シアともっと一緒にいれるって」
「確かにそうかもしれないわ。でも、騎士団長を辞めるとなれば、ウィルには次期公爵としての仕事が待ってる。全てが自由というわけではないわよ?」
「それでもだ。屋敷にはいれる」
ウィルフレッドはごろんと横になると、レティシアの膝に頭を預けた。下から見上げながら話を続ける。
「その為にも早く下を育てないとな」
「副騎士団長様も不在なのだもの。両方となると大変ね」
「まぁ、候補はいるんだ」
「そうなの?」
「あぁ、いずれ俺が騎士団長を辞するときは、そのままレイバンに騎士団長になってもらうつもりだった。あいつは皆から慕われていたからな。そして副騎士団長には第一隊隊長を推すつもりだった。こうなったからには、そのままあいつを次期騎士団長として」
「それってアイオロス様!?」
ウィルフレッドが話終わらないうちにレティシアが一人の騎士の名前をあげた。
「なんで知ってるんだ?・・・まさかシア、アイオロスの事が気になって・・・」
「違うわよ!とにかくアイオロス様ならいいと思うわ!」
レティシアが、否定はするものの随分とアイオロスを次の騎士団長として推してくる。ウィルフレッドはレティシアがいつも言う、格好いい騎士団長様と言う言葉が引っかかる。
「なぁ、シア?」
ウィルフレッドが不安気に見上げると、レティシアはウィルフレッドの髪を撫でながら話し出す。
「西の辺境に行く前に、街でミリアに会ったの覚えてる?」
「あぁ、宰相のところのご令嬢だな」
「そう、ミリアが婚約者を決めないままいるのは、アイオロス様が原因なのよ」
「どういう事だ?」
「前に話したでしょう?助けてくれた騎士様に恋をしているって。それがアイオロス様なのよ。だけど、アイオロス様は平民出身でしょう?ミリアは身分の差ゆえに、宰相様に言えずにいるらしいの。騎士爵は得られても伯爵家とはまだ差があるわ。でも、それが騎士団長様なら?宰相様もきっと頷いてくれる」
「そうだったのか。アイオロスも気になっている女性がいるらしいんだが、中々話してはくれないんだ。もしもそれがミリア嬢なら・・・全てがうまくいくかもな」
二人はイタズラを思いついたように笑みを深めた。レティシアは親友の恋の行方を。ウィルフレッドは次の後継者を。思っていることは違えど、そうなれば全てがいい方向に行くことは間違いないと確信した二人だった。
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