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休暇十日目⑤その一言は
しおりを挟む湯あみをしてラフな格好で寛いで・・・と思っていたのに、ウィルフレッドにせがまれて結局ドレスを着せられたレティシア。今は家族揃って食事の席についていた。
「それで、休暇はどうだったんだ?」
公爵当主であるディアルドが二人に問うた。
「とても有意義な時間になりました。王都で近衛などをしていれば中々行く機会のなかった辺境など、現状を知ることができましたし、師匠にもお会いでしました」
「カルスヴァ辺境伯の怪我の具合はどうだった?」
「まだ起き上がるのがやっとという状況ではありましたが、随分と回復しておられましたよ。これも夫人の看病あってこそでしょう」
「夫人?辺境伯はご結婚されていたか?」
「はい、実は少し前に奥方を迎えられておられます」
「はて・・・何も話は聞かなかったな」
「それもそうですよ。秘密裏に連れ出して娶られたんですから」
「そうだったのか。どこのご令嬢がと言っても、カルスヴァ辺境伯はだいぶ年齢もいってるし、適齢期のご令嬢にはな・・・」
ディアルドは年齢の釣り合う女性がいたかなどと思考を巡らせていた。
「お義父様、ゲオルグ様は長年の恋を実らせましたのよ?ご心配ありませんわ」
レティシアが嬉しそうに微笑むと、ディアルドは目を見開き驚いたが、次第に表情を緩めた。きっとどこかの未亡人あたりになったご令嬢がいて、その女性を想ってこれまで結婚しなかったのかと納得しかけたところだった。
「まぁ、俺もその相手がイザベラ嬢だと知った時には驚きましたが」
緩んで微笑んでいたディアルドはその表情のまま固まった。かわりに夫人のクラウディアが続く。
「イザベラ嬢って、ランドルスト公爵令嬢の!?」
「えぇ、そうですよ」
「たしかウィルフレッドに傷を追わせてから牢に捉えられていたわよね?」
「そうなんですが、これ幸いにと師匠が辺境へと連れ出されたんですよ」
ウィルフレッドとレティシアは事の顛末を話していった。公爵夫妻は驚きの連続ではあったが、ゲオルグもイザベラも相思相愛だと聞くと安心した様子だった。ルシアンは興味津々に聞き入ってはいたものの、大人の話と静かに食事を進めていた。
「それはそうと、ウィルフレッドは明日から騎士団に復帰するのだろう?」
会話の流れで、ふと、ディアルドがそうこぼすと、ウィルフレッドはピシリと音を立てたかのように固まってしまった。
「ん?」
「お義父様・・・」
「私は、何かしてしまったか?」
「今のウィルには一番酷な一言でしたわ」
そう言ったと同時に、気付けばレティシアはウィルフレッドの膝の上に移動していた。こうなればもうだめだ。ぐずぐずと言い出し、また離してもらえないだろうと静かに受け入れるしかなかった。
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