騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

文字の大きさ
上 下
325 / 544

休暇八日目④先を越された相手

しおりを挟む


使用人達と昔の話や、夜会でのウィルフレッドの様子、出会ってからこれまでに起きたことやらたくさん話をした。


「私の知らないウィルがたくさんいたわ」

「なんだか恥ずかしいな」


食後のお茶を飲みながらゆっくりしていた二人だったが、話題にも出ていて、レティシアも気になっていたものがあった。


「ウィル、リードに早く会ってみたいわ!」

「そうだな。俺が最後に見た時はまだ子犬だったからな・・・よし、行くか」


ウィルフレッドはレティシアの手を取ると、裏庭へと進んでいく。


「えっと・・・なんで増えてるんだ?」


ウィルフレッドが困惑して見ていた先には、大きさは様々だがよく似たコリー犬が数頭。公爵領はいつからこんなに犬を飼っていたんだと困惑していた。そんな様子を見かねて老執事が声をかけてきた。


「リードは一番右にいる大きな一頭です」

「待ってくれ、何故こんなに増えて・・・しかもコリー犬ばかり」

「ふふっ、ウィル、わからない?」

「な、なんだ?シアはわかるのか?」

「執事さん、もしかしてだけど、家族なのではないかしら?」

「流石若奥様、ご名答です」

「ご名答?どう言うこと・・・まさか」

「リードはお父さんになったのね」

「その通りでございます。昨年たまたまコリー犬のメスが迷い込んできたのですが、リードと随分仲睦まじい様子になりまして。飼い主は他国の商人であったのですが、2頭の様子を見るや、そのまま預けてかまわないかとおっしゃられましてね。そのまま嫁入りとなったわけでございます」

「そうなのか・・・とすると、周りの小さなのはリードの子か?」

「そうです。真ん中のリードより少し小さめで、模様が少なめの一頭が番のレティでございます」

「レティだと!?」

「はい・・・あ、奥様とお名前が似ておりますね」


老執事はにっこりと笑って二人を見た。


「誰が名付けたんだ?」

「旦那様の公爵様でございますよ?」

「父上が?」

「えぇ、昨年領地に滞在されていた時にレティが迷い込んできましてね。その際にレティと名付けられまして」

「わざとか・・・?」

「はい?」

「俺がシアを想い続けていたからわざとレティなんて名を?」

「ウィル、お義父様にその頃から私の事話していたの?」

「いいや・・・知らないはずだ」

「だったら偶然なのね」

「・・・まさかだな・・・しかし」


何とも言えない様子のウィルフレッドの様子を見ていた執事がぽつりとこぼした。


「先を・・・越されましたな」

「はぁ?」

「リードは三頭の子持ちでございます」

「・・・悪かったな・・・」


ずぅぅんと頭を下げて落ち込むウィルフレッドだったが、その視線に飛び込むようにもふもふの塊が遮った。


「わぁっ!?」

「シ、シア!?」


なんと、ウィルフレッドを通り越して、斜め後ろにいたレティシアに飛びかかったのだ。撫でて撫でてといわんばかりにこれでもかと尻尾を振って。


「おいっ!こら!!シアに群がるな!」


ウィルフレッドはかけてきた子犬達をレティシアから引き剥がそうと必死になっているが、三頭が変わるがわるにレティシアに群がって戯れていく。


「ワゥ・・・」


低く静かに一頭が声をかけると子犬達はたちまち駆けて母犬レティの元に戻っていった。


「リード、助かった・・・じゃない!子どもの躾はしっかりしろよ!」


これは誰だ?何を言ってるんだ?と気にする様子もない犬に向かって、ウィルフレッドは嫉妬と説教を繰り返していた。執事とレティシアは後から、何をやっているんだとばかりに大笑いしてその様子を見ていた。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!? 本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

処理中です...