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休暇八日目③賑やかな昼食
しおりを挟むその後使用人達に屋敷の食堂へと案内される。
「本当に宜しかったのですか?」
「えぇ、構わないわ」
ウィルフレッドとレティシアにも使用人達と同じ食事が準備された。二人に合わせたものではなく、使用人達が普段食している食事。
「お腹すいただろう?食べよう」
そう言うと、ウィルフレッドは当たり前のようにレティシアを抱え、膝の上に乗せる。そしてフォークを構えてしまった。
「ウィル、お話したいって言ってるのよ?今だけは降ろしてくれないかしら?」
「別に話ぐらいこのままでもできるだろう?」
使用人達は目の前で一体何が起きているんだとばかりに、目を見開いて驚いている。
「ほら、使用人さん達も驚いてるじゃない」
「ん?あぁ、慣れてくれ」
さも当然のように答える様子に、嬉しいやら驚きを隠せないやら、とにかく使用人達はウィルフレッドの変貌に時が止まったように静かになっていた。
「どうした?」
「皆、動揺いたしておりました」
「動揺?」
「数多の縁談を全て断って、騎士として生きていくと言いたげだった坊っちゃまが、一人の女性にこのように執着・・・あ、いえ、愛するようになられるとは」
「執着・・・確かにそうかもしれん」
ウィルフレッドは少しだけ不安気に瞳を揺らしながらレティシアを見た。
「それだけ好きだって事でしょう?私だって自ら捕まりにきたんですもの。別に構わないわ」
「ほぉ・・・坊っちゃまの独りよがりかと思っておりましたが・・・貴公子然として、騎士としても腕を振るう坊っちゃまだけを知るご令嬢は、見た目に地位にと寄ってきます。だが若奥様は、坊っちゃまの全てをお認めになられているのですな」
「そうなんだ、ボロボロ泣いても、わがまま言いながらぐずっても、嫉妬しても、全てを許し包んでくれる。俺だけに許された特権だと思うと、たまらなく嬉しくてな」
少し離れたところに座っていたメイドが話に加わる。
「坊っちゃまは夜会で随分と醜態を晒したんだとか?」
「あぁ、まぁな・・・」
「瞳が大洪水だったのよ」
「それはまた。中々感情を出されない坊っちゃまが・・・」
「だって、仕方ないだろう」
ウィルフレッドは口を尖らせてそっぽを向いてしまう。
「もうダメかと思ったんだ。諦めつかなくて・・・でも好きで。第一王子殿下もシアの事が欲しいと狙ってて。勝てないと思った。地位も名誉も何もかも持ってる。殿下を選べば将来は王妃にだってなれるんだ。だが・・・シアが選んだのは・・・俺だった」
ウィルフレッドは穏やかな笑みを浮かべ、膝に乗せていたレティシアの顔を見つめていた。それから自分で食べると言うレティシアの言葉も跳ね除け、せっせと食事を運んでは満足そうな笑顔を浮かべ、使用人達も聡明な子息がこんなにも夢中になれる相手を見つけたんだなと嬉しく思っていた。
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