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休暇七日目⑤騎士団長辞めたい
しおりを挟むウィルフレッドとレティシアが辺境を発ったすぐ後、ソハナスの宰相レガルドも辺境を発った。長期で国をあけていては、王に何かを疑われかねないと一旦戻ることにしたのである。ウィルフレッドとレティシアはブルーノに揺られ、最後の目的地にほど近い街まで来ていた。
「シア、暗くなる前に宿を取ろう。屋敷までそう遠くはないが、暗くなると危険だからな」
最後の目的地は、王都と北の辺境領の中間に位置する公爵家の領地にある屋敷。ウィルフレッドは、近衛の騎士団長になってからはあまり時間を取ることができず、領地の屋敷には訪れてはいなかった。かれこれ数年、もしかすると十代を最後に訪れていなかったかもしれない。
ウィルフレッドとレティシアは宿に部屋をとると、互いに湯あみを済ませ、ソファに並んで座り、果実水で喉を潤した。
「シア、休暇もあと二日だな・・・」
「えぇ、そうね。でも、いろんな所を回れてよかったわ」
「・・・」
急に無口になったウィルフレッドに気付き、レティシアは顔を覗き込む。
「どうしたの?」
「・・・騎士団長辞めたい」
「また、そんな事を言っているの?」
「・・・なんで俺だけ毎日王宮に行かなければいけないんだ・・・?師匠だって、あいつだって、近くにいていつでも好きな相手と一緒にいれるって言うのに・・・俺は・・・なんで他人を守ってシアと一緒にいれないんだ・・・」
「・・・そんなに辞めたい?」
「あぁ、できるならすぐにでもな」
ウィルフレッドは手に持っていたグラスをテーブルに置くと、レティシアをぎゅっと抱きしめた。しばらく沈黙が流れ、ウィルフレッドの腕の力ゆっくりと緩んでいく。
「こんな事を言っているとまたシアに叱られてしまうな」
ウィルフレッドは眉を下げてレティシアの顔を覗き込む。
「辞めてもいいのよ?」
「・・・えっ・・・本当か?」
「まぁ、格好いい騎士団長様が見れなくなるのは残念だけど」
レティシアはイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「わ、わかった!言わない、もう、言わないから!」
ウィルフレッドは途端に焦った様子になり、レティシアの両肩を掴んだ。ウィルフレッドは、自身が騎士としていなければ他の男に目移りしてしまうのではないかと思ったのだ。
「すまなかった・・・」
力なくレティシアの肩に頭を預けて縋ったウィルフレッド。その様子を見て、レティシアも流石に反省した。しかしまだ騎士団長でいてもらわないと困る。いろんなところを巡り、さまざまな情報が手に入った。あとはどうすればピースが上手くハマるのか。縋って甘えるウィルフレッドを宥めながら、レティシアはそんな事を考えていた。
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