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休暇五日目⑦辺境伯の提案
しおりを挟むソハナスから命からがら逃げてきた王女であったレティシアの母レイリア。当時関わった本人達から聞く話は新鮮だった。
「ところで、騎士団長夫妻はもちろん滞在していくのだろう?」
「えぇ、ですが、ご迷惑にはなりませんか?」
「迷惑なんてことはない。レティシア様は、俺にとってはもう1人の娘みたいなものだからな」
「そう言っていただけると嬉しいですわ」
「そこでだ」
クレイドルはウィルフレッドの目を見て話だす。
「愛娘のエルサが、レティシア様と会いたくてうずうずしているんです。なので、こちらはこちらで男だけで話でもしませんか」
「でも・・・」
「ウィル、こんな機会滅多にないわ。私もエルサ様と女同士でしかできない話があるものよ?」
「そうか・・・わかった」
「ふはははっ!本当に騎士団長殿は夫人にべったりなんだな」
クレイドルは涙を堪える様子を見せ大笑いしていた。
コンコンコン
「失礼します。お父様、外まで笑い声が聞こえておりますわ」
応接間に現れたのは、凛とした黒髪の女性だった。
「あぁ、エルサ。すまない、すまない。本当に面白くてな」
「初めまして、騎士団長様。父がすみません。私、エルサ・アンバーと申します」
エルサが綺麗なカーテシーで挨拶をする。
「ご丁寧にありがとう。近衛の騎士団長を務めている、ウィルフレッド・アバンスだ」
「騎士団長様、恐れ入りますが、レティシア様を少しお借りしますわ」
「・・・仕方ないな・・・」
ウィルフレッドはわかりやすくしょんぼりした態度を見せ、ぐりぐりっと数回肩に額を押し付けため息をつくと、やっとレティシアを解放した。腕が緩まった事で、レティシアはひざから降りるとウィルフレッドに向き直る。
「ウィル、後でたくさん褒めてあげるわ。少しだけ待ってて」
「あぁ・・・」
「ウィル?」
「なるべく早く帰ってきてくれ。でないと迎えに行ってしまいそうだ」
「はいはい、わかったわ」
エルサとレティシアが応接間を出ていく間も、クレイドルは笑いを必死に堪えていた。
「さぁ、騎士団長殿、レガルド殿、作戦会議でもしますかな」
「作戦会議ですか・・・」
クレイドルは隣国との関係の変化への期待、ウィルフレッドはレティシアが危険にさらされるのではという危惧、レガルドは国に何か変化をもたらすことができるのではないかという希望。様々な思いが入り混じった男だけの作戦会議は、途中までは真剣だった様相も、ウィルフレッドが我慢の限界を迎え、レティシアの元へ行きたいと吐露したことで、一旦お開きとなった。その後ウィルフレッドがレティシアの元に駆け込み、膝を確保すると頭を預けてごろごろと甘える。エルサはただただ目を見開き驚いた様子で見ている事しかできなかった。
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次回
危険とわかっていてここにシアを置いておくのは気が気じゃない
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