上 下
302 / 543

休暇五日目⑦辺境伯の提案

しおりを挟む


ソハナスから命からがら逃げてきた王女であったレティシアの母レイリア。当時関わった本人達から聞く話は新鮮だった。


「ところで、騎士団長夫妻はもちろん滞在していくのだろう?」

「えぇ、ですが、ご迷惑にはなりませんか?」

「迷惑なんてことはない。レティシア様は、俺にとってはもう1人の娘みたいなものだからな」

「そう言っていただけると嬉しいですわ」

「そこでだ」


クレイドルはウィルフレッドの目を見て話だす。


「愛娘のエルサが、レティシア様と会いたくてうずうずしているんです。なので、こちらはこちらで男だけで話でもしませんか」

「でも・・・」

「ウィル、こんな機会滅多にないわ。私もエルサ様と女同士でしかできない話があるものよ?」

「そうか・・・わかった」

「ふはははっ!本当に騎士団長殿は夫人にべったりなんだな」


クレイドルは涙を堪える様子を見せ大笑いしていた。



コンコンコン


「失礼します。お父様、外まで笑い声が聞こえておりますわ」


応接間に現れたのは、凛とした黒髪の女性だった。


「あぁ、エルサ。すまない、すまない。本当に面白くてな」

「初めまして、騎士団長様。父がすみません。私、エルサ・アンバーと申します」


エルサが綺麗なカーテシーで挨拶をする。


「ご丁寧にありがとう。近衛の騎士団長を務めている、ウィルフレッド・アバンスだ」

「騎士団長様、恐れ入りますが、レティシア様を少しお借りしますわ」

「・・・仕方ないな・・・」


ウィルフレッドはわかりやすくしょんぼりした態度を見せ、ぐりぐりっと数回肩に額を押し付けため息をつくと、やっとレティシアを解放した。腕が緩まった事で、レティシアはひざから降りるとウィルフレッドに向き直る。


「ウィル、後でたくさん褒めてあげるわ。少しだけ待ってて」

「あぁ・・・」

「ウィル?」

「なるべく早く帰ってきてくれ。でないと迎えに行ってしまいそうだ」

「はいはい、わかったわ」


エルサとレティシアが応接間を出ていく間も、クレイドルは笑いを必死に堪えていた。


「さぁ、騎士団長殿、レガルド殿、作戦会議でもしますかな」

「作戦会議ですか・・・」


クレイドルは隣国との関係の変化への期待、ウィルフレッドはレティシアが危険にさらされるのではという危惧、レガルドは国に何か変化をもたらすことができるのではないかという希望。様々な思いが入り混じった男だけの作戦会議は、途中までは真剣だった様相も、ウィルフレッドが我慢の限界を迎え、レティシアの元へ行きたいと吐露したことで、一旦お開きとなった。その後ウィルフレッドがレティシアの元に駆け込み、膝を確保すると頭を預けてごろごろと甘える。エルサはただただ目を見開き驚いた様子で見ている事しかできなかった。



ーーーーーーーーーーーーー

次回

危険とわかっていてここにシアを置いておくのは気が気じゃない


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

離宮に隠されるお妃様

agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか? 侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。 「何故呼ばれたか・・・わかるな?」 「何故・・・理由は存じませんが」 「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」 ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。 『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』 愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

悪役令嬢に転生してヒロインを溺愛している王子に殺されそうになったが一番の推しの近衛騎士に助けられて結婚しました

夜炎伯空
恋愛
「ぎゃーーーーーー!! 殺さないでーーーーーー!!」 「あれだけのことをしておいて、今更、命乞いだと!! 彼女にしたことは死をもって|償(つぐな)ってもらうからな!!」 「それは私だけど、私じゃないんですーーーーーーーー!!!」  乙女ゲームの悪役令嬢カリアに転生した直後、私はヒロインを愛する王子に殺されそうになっていた―― 「ラムド、一生のお願い!! 私を助けて!!」  私はそう言って深々と頭を下げた。 「カリア様でも頭を下げることがあるんですね……。わかりました、何とかしてみせます」  悪役令嬢カリアの滅多に見せない行動に、ラムドは驚きながらそう答えた――

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...