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休暇四日目⑤もう一つの目的地
しおりを挟む白馬のブルーノがゆっくりと歩を進める。途中、辺境の使用人や、騎士達とも挨拶を交わしながら進み、辺境の屋敷を出た。ゲオルグには北の辺境へ行くと言ったが、二人にはもう一つの目的地があった。
「ここがイズヴァンドか・・・」
「なんだか時が止まっているようだわ・・・静かね」
「陛下に話は聞いていたが・・・捨て置かれた・・・そんな言葉が合いそうだな」
「そうね・・・」
人の姿も見えない街中を、ブルーノが静かに進んでいく。
「わぁ!白いお馬さんだ!」
「本当だ!初めて見た!」
どこからともなく、5、6歳くらいだろうか、数人の子ども達の声が聞こえてきた。
「子どもがいるな」
「えぇ、ちょっと話を聞いてみましょう」
ウィルフレッドとレティシアはブルーノから降りると、声がした方へと歩いていく。民家の間から、古びた教会が視界に入ってきた。子ども達はそこにいるようだった。
「こんにちは」
「・・・こ、こんにちは・・・」
「ここにはあなた達だけしかいないの?」
「・・・ううん、神父様がいるよ?」
「そう・・・連れて行ってくれる?」
「うん!いいよ。こっち!」
年齢も様々な子ども達。痩せ細っているわけではないが、決していい暮らしぶりではないようだ。教会にほど近いところまで来たところで、子どもたちがいない事に気付いた神父とシスターらしき大人が、慌てて出てきた。
「お前達!勝手に外に出てはいかんと言っていただろう!」
「ごめんなさい!」
「神父様、怒らないで」
「外は危ないと何度言ったら・・・?・・・えっと、こちらは?」
子ども達の姿を見つけ、安心したのと、怒っているのとで、ウィルフレッドとレティシアがいた事にようやく気付いたようだ。
「突然訪ねる形になってすまない。俺は王都で近衛の騎士団長をしているウィルフレッド・アバンス。それと妻のレティシアだ」
「こ、近衛の騎士団長様!?な、何故このようなところに?」
「北の辺境へと行く途中で寄らせて貰った。街の様子を見ておきたくてな」
「そうでしたか・・・何もないところですので・・・」
「構わなくていい。少し話が聞ければと思っての事だ」
「話・・・ですか?」
「あぁ、レイバンを知っているか?」
「っ!?・・・存じて・・・おります・・・ここでは何ですから、中へどうぞ」
神父は何とも言えない表情で、少し寂しげに笑顔を浮かべると、二人を教会の中へと案内した。
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次回
20年前から時が止まっているのですよ
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