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休暇四日目③自慢が自慢にならない
しおりを挟む真っ赤になったり頬を膨らませたり、イザベラは辺境にきてからというもの、少しばかり表情や感情が豊かになった。そんな幼い妻の変化を感じながら、ゲオルグは幸せに浸っていた。
コンコンコン
「失礼します。旦那様、おはようござい・・・ます」
「あぁ、おはよう。どうした?」
「いえ・・・随分と距離がお近くなられたものだなと」
老執事のジルは驚きつつも穏やかな表情で二人を見ていた。
「イザベラが可愛いすぎてな・・・もう離してやれそうにない」
「そうですか、そうですか。それはようございました。それはそうと、アバンス団長様とご夫人がお話をしたいとの事ですが」
「そうなのか?わかった、ここに・・・いや、部屋を移ろう。隣の寝室に呼んでくれ」
「はい、承知しました」
老執事は踵を返すと部屋を出ていった。
「ここに呼ばれてもよかったのではないのですか?」
「ここはイザベラの部屋だ。いくら奥方がいるウィルフレッドだからといって、この部屋に入って欲しくはないからな。ということで移動するぞ?手を貸してくれ」
「あっ、はい」
イザベラの手を借りて、ゲオルグはゆっくりと起き上がる。隣の寝室へは内扉で繋がっていて、廊下に出ずとも行き来できるようになっていた。寝室の寝台にゆっくりと身を預けると、繋いでいたままのイザベラの手を引き、先ほどと同じように、自身の胸に寄りかからせた。
「あ、あの・・・」
「なんだ?」
「アバンス団長様達が来られるのですよね?」
「そうだが?」
「こ、このままですか?」
「あぁ、別にいいだろう?」
顔がみるみるうちに赤くなっていき、耐えられなくなったイザベラは、またゲオルグの胸に頭をつけて顔を隠した。
コンコンコン
「失礼します。おはようございます、師匠」
「おはようございます、ゲオルグ様」
「あぁ、ウィルフレッドも夫人もおはよう」
「・・・随分と仲良くなられたのですね?」
「いいだろう?」
「何も羨ましくなんてありませんよ」
「ちっ、つまらんな」
「俺は毎晩シアと一緒に寝てますし、シアと湯あみだってするんです。別に師匠と夫人がイチャついていようが、何にも羨ましいなんて事ありませんよ」
ウィルフレッドはやれやれと言った感じで笑っている。
「湯あみか・・・ん?何も着ずにって事か?」
「そうですよ?湯に浸かるのに服を着ているのもおかしいでしょう?」
「そうだな・・・湯あみか・・・」
ゲオルグは顔を隠したままのイザベラが、かすかにビクッと反応したのを見逃さなかった。
「怪我で一人では湯あみもまともにできないからな・・・それもありだな」
「師匠では介護・・・ですね」
「はぁっ!?・・・むぅ・・・仕方ない・・・ちゃんと治ってからにするか・・・」
「そうしてください」
ウィルフレッドは呆れたように、ふっと笑った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
そのうち可愛い嫁を連れて自慢しに行くとでも言っといてくれ
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