313 / 544
休暇七日目①目の前で見たもの
しおりを挟む「おはようございます」
「おはようございます、エルサ様、副騎士団長様」
「アバンス団長殿、夫人、おはようございます」
翌朝、ウィルフレッドとレティシアに誘われ、朝食の席に、エルサとソルディオが現れた。レティシアの隣にはもちろんウィルフレッドがいるが、向かいにはエルサが席に着いた。と言うことは、レティシアの逆隣にはソルディオがいるわけで。
「えっ!?ちょ、ちょっと!?」
レティシアが席に着くと、椅子が引きずられるように動き、よろけてしまった。
「ウィル、急にびっくりするじゃない!」
「シアは俺の近くにいないとダメだ」
「もう・・・」
「本当なら膝の上に座って欲しいんだぞ?」
頬を膨らませてウィルフレッドが言う。これでも28歳の大人。レティシアは呆れながらため息をつくも、仕方ないわねと苦笑いしながらう許してしまうのである。
「お二人は本当に仲がよろしいのですわね」
「ふふっ、羨ましいです?」
「う、羨ましくは!・・・ないですわ」
言い淀んだエルサがほんのり赤くなる。そんなエルサを慈しむように優しい笑みでソルディオは眺めていた。そこへ給仕の使用人達が料理を運んできた。
「まぁ、おいしそうだわ!」
「領内でとれる新鮮な野菜を使ってますわ。気に入っていただけると嬉しいです」
色とりどりの料理を眺めていたレティシアの横で、ウィルフレッドは、手にフォークを持って今か今かと待っていた。
「騎士団長様、もうフォークを手にされて、随分とお腹が空いていらっしゃったのですね」
ウィルフレッドの様子を見ていたソルディオが、声をかける。
「ん?俺は後でいい」
「?」
エルサとソルディオは何を言っているのかという顔でウィルフレッドを見ている。そして、ウィルフレッドは、自身の皿の料理をフォークで刺すとレティシアの口に差し出す。
「き、騎士団長様!?」
「ま、まさか・・・」
エルサとソルディオは、まさかウィルフレッドがいわゆるあーんをしようとしていたなどと思うはずもなく、目を丸くしていた。
「あーん」
「おいしいか?」
「・・・んっ」
レティシアはモグモグさせながら頷く。
「これも美味しそうだぞ?」
ウィルフレッドはせっせとレティシアの口に料理を運んでいた。
「ウィルは食べないの?」
「食べたい」
「じゃあ、はい、あーん」
「あーん・・・」
一体何を見せられているのか。エルサは目を見開いて固まり、ソルディオはポカンと口を開けて見ていた。
「どうされましたの?副騎士団長様もあーんを待ってますの?」
「は、はぁ!?い、いや!」
「シア、シアが食べさせるのは俺だけだぞ?いくら強請られたってダメだ」
ウィルフレッドは我慢の限界とばかりにレティシアの身体を抱き上げ、自身の膝に乗せた。
「誰も私が食べさせるなんて言ってないでしょう?ねぇ、おろしてくれる?」
「嫌だ」
「もう・・・でも、折角ですし、お二人も食べさせ合いなさってみる?」
レティシアはいたずらっぽい笑みを浮かべ、エルサとソルディオを交互に見る。
「はい!?け、結構ですわ!」
「え、えっと・・・?」
顔を真っ赤にして全力拒否をするエルサ。対し、ソルディオは、して貰いたかったのか、少し残念そうに眉を下げ、エルサを見つめていた。
1
お気に入りに追加
330
あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる