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休暇六日目⑤ノリノリの使用人達

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明日確かめたい事がある。レティシアは密かに準備を進めた。明日の朝食を中庭にてとりたいと、辺境伯邸の使用人達に協力を仰いだ。もちろん使用人達もこちら側である。我らがお嬢様がついに男性を意識するかもとノリノリだった。もしかしたらこの悪巧みは失敗するかもしれないのにと、レティシアは少しだけ後めたさも感じて。


「朝食ですね、お任せください。私が腕によりをかけてご準備いたしますよ!」


と料理長は言う。


「テーブルやお部屋を演出するお花はお任せください!」


と庭師は言う。


「朝食の後にはおいしいお茶も必要ですわ!話が弾むよう、美味しい茶菓子も準備しませんとね!」


とメイド達は言う。


随分と盛り上がってしまっているが、はたしてレティシアの悪巧みはうまく行くのか・・・。





「シア、随分と盛り上がっているな」

「えぇ、使用人の方々も、エルサ様には幸せになっていただきたのよ。その点、副騎士団長様は、年齢も釣り合うし、のちに辺境を率いていく事もできるお方だわ。きっと彼らにはうってつけの相手に見えているのかもしれないわね」

「そんなものなのか」

「私だってそうだったわ」

「シアが?」

「えぇ、ウィルの熱烈なアタックもそうだけれども、公爵家の皆さんから外堀を埋められていたもの。気付けばこうなっていた・・・って感じだったわね」

「確かにな・・・」


ウィルフレッドは、ソファの隣り合わせに座るレティシアの手をとって、すりすりさすったり、もみもみ揉んでみたり。まるでいじけているかのようにも見えた。


「まさか、父上まであんな事言うなんて思わなかったしな」

「お膝に乗せてみたいって言っていた事?」

「あぁ。それは俺だけの特権なのにな・・・」


ウィルフレッドはとっていたレティシアの手を引き寄せると、手の甲にちゅっとキスを落とす。


「ウィルって、俺だけって言うの好きね?」

「当たり前だろう?誰かと分け合うのは食べ物くらいでいい」

「私は食べ物ではなかった?」

「あぁ・・・甘いし、美味しそうだし・・・でも、誰かに食べさせるなんて絶対にダメだ。俺だけだ」


ウィルフレッドはそのままレティシアをソファに押し倒した。


「この綺麗な髪だって、このアメジストみたいな綺麗な瞳だって、この・・・」

「・・・ん・・・」

「唇だって、全部俺のだ。もう誰にもやらないし、誰にも触れさせたくない」


ウィルフレッドは深く口づけをした。そのまま身体を起こすと、流れるままにレティシアの身体を抱き上げた。


「ウィル?」

「今日は早く寝よう。明日やる事があるだろう?」

「そうね」


ウィルフレッドは寝台へと運ぶと、レティシアの身体をそっと下ろす。そのまま自身も横に寝転ぶ。ウィルフレッドに後抱きにされたレティシアは、背中に体温と鼓動を感じながら、静かに深い眠りへと沈んでいった。





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