311 / 544
休暇六日目⑤ノリノリの使用人達
しおりを挟む明日確かめたい事がある。レティシアは密かに準備を進めた。明日の朝食を中庭にてとりたいと、辺境伯邸の使用人達に協力を仰いだ。もちろん使用人達もこちら側である。我らがお嬢様がついに男性を意識するかもとノリノリだった。もしかしたらこの悪巧みは失敗するかもしれないのにと、レティシアは少しだけ後めたさも感じて。
「朝食ですね、お任せください。私が腕によりをかけてご準備いたしますよ!」
と料理長は言う。
「テーブルやお部屋を演出するお花はお任せください!」
と庭師は言う。
「朝食の後にはおいしいお茶も必要ですわ!話が弾むよう、美味しい茶菓子も準備しませんとね!」
とメイド達は言う。
随分と盛り上がってしまっているが、はたしてレティシアの悪巧みはうまく行くのか・・・。
「シア、随分と盛り上がっているな」
「えぇ、使用人の方々も、エルサ様には幸せになっていただきたのよ。その点、副騎士団長様は、年齢も釣り合うし、のちに辺境を率いていく事もできるお方だわ。きっと彼らにはうってつけの相手に見えているのかもしれないわね」
「そんなものなのか」
「私だってそうだったわ」
「シアが?」
「えぇ、ウィルの熱烈なアタックもそうだけれども、公爵家の皆さんから外堀を埋められていたもの。気付けばこうなっていた・・・って感じだったわね」
「確かにな・・・」
ウィルフレッドは、ソファの隣り合わせに座るレティシアの手をとって、すりすりさすったり、もみもみ揉んでみたり。まるでいじけているかのようにも見えた。
「まさか、父上まであんな事言うなんて思わなかったしな」
「お膝に乗せてみたいって言っていた事?」
「あぁ。それは俺だけの特権なのにな・・・」
ウィルフレッドはとっていたレティシアの手を引き寄せると、手の甲にちゅっとキスを落とす。
「ウィルって、俺だけって言うの好きね?」
「当たり前だろう?誰かと分け合うのは食べ物くらいでいい」
「私は食べ物ではなかった?」
「あぁ・・・甘いし、美味しそうだし・・・でも、誰かに食べさせるなんて絶対にダメだ。俺だけだ」
ウィルフレッドはそのままレティシアをソファに押し倒した。
「この綺麗な髪だって、このアメジストみたいな綺麗な瞳だって、この・・・」
「・・・ん・・・」
「唇だって、全部俺のだ。もう誰にもやらないし、誰にも触れさせたくない」
ウィルフレッドは深く口づけをした。そのまま身体を起こすと、流れるままにレティシアの身体を抱き上げた。
「ウィル?」
「今日は早く寝よう。明日やる事があるだろう?」
「そうね」
ウィルフレッドは寝台へと運ぶと、レティシアの身体をそっと下ろす。そのまま自身も横に寝転ぶ。ウィルフレッドに後抱きにされたレティシアは、背中に体温と鼓動を感じながら、静かに深い眠りへと沈んでいった。
1
お気に入りに追加
331
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる