騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

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休暇六日目①格好いい騎士団長様を再度

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「ウィル、少し歩かない?」

「ん、散歩か?いいぞ」


エルサと2人で話していたレティシアの膝を陣取ると、ゴロゴロとずっと甘えていたウィルフレッド。部屋に戻り、男三人で話した事について触れた。その際に、ソハナスの王がレティシアの事を気に入り執着をするかもしれないという事に危機を感じていたが、相手が若ければよかったのかという問いかけに、曖昧に答えてしまったがために、今朝起きるまでずっと離しては貰えず終いだった。レティシアの誘いに嬉々として乗ったウィルフレッドだったが、すぐに後悔する事になる。


「おい、シア、なんでこんな所に来たんだ・・・」

「え?格好いい騎士団長様を見るためよ?」

「っ!シ、シア!ここの騎士団長はクレイドル殿だぞ?まさか、クレイドル殿の事を・・・確かに渋くて格好いいとは思う。戦場を生き抜いてきた御仁だからな・・・お、俺もいずれはああいう渋みというやつが出るかもしれん。今後の楽しみにだな・・・」

「ウィル、何言ってるの・・・」


レティシアは必死に繕うウィルフレッドの様子に苦笑いしていた。このやり取りは西の辺境伯であるゲオルグのところでもやったはずである。しかも散歩だと称して行き着いた場所は、北の辺境領で従事している騎士達の稽古場だった。騎士達は首を傾げていた。目の前で女性に向かって必死に訴えかけている情けない様子の男は一体誰なのだと。まさか訪ねてきている近衛の騎士団長だとは誰もが思いもしなかった。


「随分と必死なんですね」


2人の背後から声がして振り返ると、そこには金の髪に深緑の瞳をした、見目のいい1人の騎士がいた。騎士は柔らかい表情で2人を見ていた。


「失礼しました。騎士達が目の前で寸劇でも始まったのかと首を傾げていたものですから。私はこの辺境騎士団の副騎士団長を務めています、ソルディオ・クライナーと申します」

「お見苦しいところをお見せしました。レティシア・アバンスです。こちらは夫のウィルフレッド・アバンス。王都で近衛の騎士団長をしておりますわ」


一言も発しないウィルフレッドの代わりにレティシアが挨拶をしたのだが、目の前でソルディオが苦笑いをして困った様子を見せている。何かと思えば、ウィルフレッドがソルディオを睨みつけていたのだ。


「ウィル?どうしてそんな目で見てるの」

「・・・シアは俺のだからな。絶対に渡さない」

「ウィル?もう・・・こっち見て」

「・・・?」


ちゅっ


「んっ・・・」


レティシアはソルディオを睨みつけていたウィルフレッドの服を掴み、自身に顔を向けさせると頬に軽くキスをした。その感触にウィルフレッドはたちまち表情が緩んでいく。さっきまで睨みつけていた狂犬は何処へやら。レティシアに抱きつき髪に鼻を埋めてすんすんと匂いを嗅いでいる。


「夫人は猛獣使いなのか・・・すごいな」


くくっと喉を鳴らし、ソルディオは面白いものを見たと笑いを堪えていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー

次回

夫人は魔法使いかなにかかな・・・




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