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休暇五日目④辺境伯との対峙
しおりを挟む北の辺境までは隣街まで来ていた為にすぐ到着する事となった。
「アンバー辺境伯様、ご無沙汰しております」
「よくぞ参られた。久しぶりですね、ベルモンド辺境伯令嬢」
「ふふっ」
「ははっ!」
「堅苦しいのはやめましょう。それに私はもう辺境伯令嬢ではないわ」
「そうだったな、小公夫人」
北の辺境伯であるクレイドル・アンバーとレティシアは挨拶を交わすと吹き出すかのように笑い出した。
「シア?」
「あ、そうだわ!クレイドル様、こちら私の夫になったウィルフレッド・アバンスですわ」
「あぁ、話は聞いている。私はクレイドル・アンバー、北の辺境伯領の領主を務めている」
「ウィルフレッド・アバンスです。近衛の騎士団長を務めております」
「まさかレティシア様を娶られたのが騎士団長殿だとはな。てっきり王子殿下がお相手になるものだと思っていたんだがな」
「私がそういうの望んでないのご存じでしょう?」
「まあな」
随分と気安く話をする二人に、ウィルフレッドは困惑していた。
「ウィル、クレイドル様とは幼い頃からのお付き合いなの。親戚のおじ様みたいなものよ」
「そうか、辺境同士交流があるんだと言っていたな」
ふっと笑いかけるも、ウィルフレッドはレティシアを抱き寄せる。
「どうしたの?」
「どうもしない」
「はははっ、騎士団長、大丈夫だ、取ったりしませんよ。それより、後ろの方は?」
「クレイドル様、まずはお話を聞いていただきたいの。敵意がない事は約束するわ」
「ほぉ・・・聞こう」
クレイドルは屋敷の応接間に3人を案内した。
「騎士団長殿、なぜそうなる?」
「ん?あぁ・・・お構いなく」
応接間に入ったウィルフレッドはレティシアを抱きかかえると、テーブル横の1人掛けのソファへとそのまま腰を下ろした。いわゆる膝の上という格好。クレイドルとレガルドは向き合って座る形となった。
「随分とべったりだな」
「クレイドル様、申し訳ありません。ウィルの事は椅子だと思って構いませんわ」
「騎士団長が椅子だと?またこれは丈夫な椅子だな」
クレイドルは愉快だと言いながら大笑いした。
「失敬、少しばかり余興が面白すぎた。それで貴方は?」
「申し遅れました、私は隣国ソハナスの宰相であります、レガルド・ホレーシアと申します」
「ソハナスの宰相?」
クレイドルの眉間に皺がよる。
「宰相殿がどのような用件でしょう?」
クレイドルの放つ威圧に飲まれ、中々話し出す事ができないレガルドの様子に、レティシアが助け船を出した。
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次回
隣国の王と言えばあれか・・・まだ諦めがつかずにいるんだな・・・
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