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休暇一日目⑧狭いが故の至福

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湯あみも済ませ、宿で出た夕食に舌鼓をうつと明日も朝から出発する事を考え、早めに就寝することにした二人。いそいそと寝台の中へと入っていこうとするレティシアを見て、ウィルフレッドはまたしても拗ねた表情で見ている。さながら小さな子どものようだ。


「どうしたの?」

「一緒がいい」

「狭いんだから仕方ないわ」

「・・・」


むぅっと唇を尖らせていたかと思えば、何かを思いついたようで、ウィルフレッドはレティシアの手を自分のほうに引き寄せた。


「どうしたの?」

「こうすればいいだろう?」


ウィルフレッドは空いていたもう一台の寝台に天井を仰ぐように仰向けに寝転がると、レティシアの腕を引いた。


「ちょ、ちょっとウィル!?」

「あぁ・・・これでいい。安心する」

「え、えぇ?このまま寝るつもりなの?」

「あぁ」


レティシアは困惑していた。二人で並ぶには寝返りでも打てば落ちてしまいそうな狭い寝台。ウィルフレッドは仰向けに寝転がると、自分に覆い被せるようにレティシアの身体を乗せた。そのままぎゅっと抱きしめると、レティシアの頭の上から髪に頬を擦り寄せていた。


「重くないの?」

「全然」

「二台あるんだから、ゆっくり寝ればいいのに」

「嫌だ。これがいい」

「・・・わかったわ」


説得するのは無理そうだと、レティシアは早々に諦めて苦笑する。いつも一緒に寝ている事に加えて、結婚式を邪魔され、レティシアを失うかもしれない、捨てられるかもしれないと自暴自棄なったウィルフレッドは、少しでも離れることが辛く、今まで以上に眠れなくなっていた。少しでも姿が見えなかったり、存在が感じられないと、自然に涙が流れてくる。そんな状態になると、さらに離してもらえなくなる。だったら、このままされるがままになっていたほうが、多少は良いというものだ。


「シア・・・どんな状況であっても、別々に寝るなんて、もう考えられない」

「そんなに?」

「あぁ、シアと出会う前にはなんともなかったのにな・・・5歳の頃には一人で寝ていたし」


ウィルフレッドはレティシアから香る石鹸の匂いをすんすんと嗅いでいたが、しばらくすると収まった。どうしたのかと見上げてみると、嬉しそうな顔ですやすやと眠っている夫がいた。


「仕方ない人ね。でも、嫌いにはなれないわ。私も・・・あなたの鼓動を聞くと安心するもの。あの時・・・刺されて意識が戻らなかった時・・・どれだけ怖かったか。この鼓動が止まってしまうかもしれないと思うことがどれだけ恐ろしかったか・・・よくわかるわ」


レティシアはウィルフレッドの鼓動を確かめるように、胸に耳を当てて聞いていた。気付けばいつのまにか眠ってしまったようだ。その日は、ウィルフレッドが途中で飛び起きることはなかった。疲れからなのか、いや、一晩中レティシアの重みと温もりを感じていられたからであろうと思う。



ーーーーーーーーーーーーーーーー

次回

【ウィルフレッドside】

俺の妻は・・・世界一いい女だ




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