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休暇三日目⑤気持ちに気付いた二人は
しおりを挟む「ゲオルグ様?お顔が真っ赤ですが・・・熱・・・ではないですのよね?」
「あ、あぁ・・・熱はない」
なんともぎこちない会話だが、互いを意識してしまった結果である。
「あの」「なぁ」
「!?」「!」
声が重なってしまったことに二人して言葉を失った。
「先にどうぞ・・・」
「い、いや、イザベラからいいぞ?」
「・・・で、では・・・」
イザベラは寝台に乗ったままだが、姿勢を正すとゲオルグの瞳をじっと見つめる。
「私・・・ゲオルグ様が好きです」
「ほ、本当か!?」
「はい・・・」
「そ、そうなのか・・・俺も・・・だ」
「!」
イザベラは驚きで目を見開いた。だが、同時に話し出そうとした事を思い出す。
「あ、あの・・・ゲオルグ様も何か話したい事があったのでしょう?」
「あぁ・・・先に言われちまった」
「えっ?」
「俺も、同じ事を言おうとしていたんだ」
イザベラは嬉しくて今にも涙が溢れそうになるが必死に堪えた。ヴィンセントには振り向いてもらえず、一度は罪も犯した。幸せな結婚など諦めていた。有無を言わさず辺境に連れてこられ、誰かに愛されるなんて思いもしなかった。そして今、目の前で優しい目をして見つめる男が、自分の夫で唯一の人であってくれるのだと。
「イザベラは昔からずっと可愛いままだな」
「昔?」
「あぁ、流石に気持ち悪がられるから言わないが、ずっと可愛いと思ってた」
「昔っていつですか?」
「・・・聞かない方がいいと思うぞ?」
「聞きたいです」
「はぁ・・・これを聞いて気持ち悪いと思っても、俺からは逃げられんぞ?」
「何故逃げるのです?私の居場所はここですもの」
イザベラはにこっと笑って見せた。
「・・・4歳だ」
「?」
「イザベラが4歳の時に可愛いなと思ったんだ。それからずっと俺の心にはイザベラしかいないんだ。最初は可愛らしい、それだけだった。当時27歳の俺が4歳の子を可愛いと思うのは幼子を見て可愛いなと思うものだったのだと思う。だが、近くで成長していく姿を見て、時折真剣な顔をすることも増え、毎日一生懸命で・・・可愛いからだけではなく、一生懸命なところを好きになっていった。諦めきれずにな・・・手に入れられないってのに、ずっと諦めがつかなくて、他の女なんて考えられなくて・・・結婚も、婚約者でさえも作る気にならなかった。ずっとイザベラだけが好きだったんだ」
「そんなに前から・・・」
「なぁ?聞かない方がよかっただろう?」
「嬉しいです!」
「うぉっ!?」
イザベラは、父親ほどに歳の離れた目の前の男に、愛おしさが溢れ、我慢ができずに抱きついた。ゲオルグは驚いたが、イザベラ自身が抱きついてきたことが嬉しくて、甘んじて受け入れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
次回
奥様を泣かせてしまったなんて旦那様に知れたら、私の首が飛んでしまいます
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