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休暇三日目①イザベラから茶の誘い
しおりを挟む昨日は王都での事件の詳細をゲオルグとイザベラに話した。イザベラの兄であるマクシミリオン。ゲオルグも面倒を見ていた事のあるレイバン。ウィルフレッドも、この二人が関わっている事は、流石に話すのが辛かった。だが、その話の途中で、ゲオルグが急に行動に出たことに、ウィルフレッドもレティシアも驚いた。だが、イザベラの反応を見るに、案外惹かれあっているのだという事がわかり安堵した。朝食を済ませ、二人でのんびりしていると、客間のドアをノックする音がした。
コンコンコン
「あら、誰かしら?」
「俺が出る」
ウィルフレッドが、客間の扉を開けると、そこにいたのはイザベラだった。
「あ、あの・・・レティシア様とお話がしたくて」
「話?あぁ、どうぞ?」
ウィルフレッドは扉を開けると中へと促した。イザベラは中へ入ってくるものの、チラチラとウィルフレッドとレティシアを交互に見ている。
「イザベラ様?」
「あの、えっと・・・レティシア様と二人でお話がしたくて・・・」
ほんのり赤く染めた顔でイザベラは俯いている。だが、イザベラの背後にいたウィルフレッドには、その表情は見えず、またレティシアに危害を加えようとしているのかと疑いの目を向ける。
「二人で?一体、何を企んでいるんだ!」
少し語尾が強くなってしまったウィルフレッド。
「た、企んでなど・・・」
「ウィル、二人でお話しさせてくれないかしら?イザベラ様はそんな事はされないわ」
「でも・・・」
「女同士でしか話せない事ですよね?」
「は、はい・・・」
レティシアは嬉しそうに微笑むと、ウィルフレッドに提案をした。その結果、ゲオルグの寝室から見える庭に、軽食とお茶を準備して二人きりで語らう事になったのだ。ゲオルグの寝室にはウィルフレッドが訪れており、これならお互いに姿も見えるし安心でしょう?と。
「それで、俺の部屋から見えるところで二人がお茶しているという事か」
「そうなんです」
「ふっ、随分と不貞腐れているな」
「だって、俺はシアと一緒にいたいのに・・・いくら相手が女性でも嫉妬してしまいます」
「ははっ、俺だって二人きりになるならお前よりイザベラのほうがいいんだぞ?」
「だったら交換しましょうよ・・・逆にこの距離がもどかしい・・・」
「そうだな。二人は何を話しているんだ?」
「なんか、女同士でしか話せない事だと言われて教えて貰えませんでした」
「そうなのか・・・俺達は役に立たないってことなんだな」
くつくつと笑うゲオルグに対し、ウィルフレッドは不貞腐れながらも、楽しそうに笑うレティシアを眺め続けていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
だって・・・くっ・・・一体何の、心配してるっ、かと思えば・・・はははっ
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