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休暇二日目⑤イザベラとの再会
しおりを挟む「奥様!」
イザベラはゲオルグに付き添って看病をしていた。当主であるゲオルグは、朝食を少し口にし、薬を飲んだことで眠気がきたらしく、すうすうと規則正しい寝息を立てている。桶に汲まれた水を替えに部屋から出てきたところに、門番の騎士が駆けつけて声をかけた。
「そんなに急いでどうされましたの?」
「あ、あの、表に、近衛の騎士団長であらせられる、ウィルフレッド・アバンス騎士団長様がいらっしゃってます」
ガタン
イザベラは手にしていた桶を、手を滑らせて落としてしまった。あたりは水浸しだ。
「お、奥様!大丈夫ですか!?だ、誰かメイドはいないか!」
騎士の声に気付き、メイドが数名駆けつけた。
「奥様、水が!」
「お着替えいたしましょう!お風邪を召されますわ!」
「お怪我はありませんか!?」
メイド達の怒涛の心配に驚いたイザベラは正気に戻った。
「ごめんなさい。少しぼーっとしてしまっていたみたい。大丈夫よ。でも、お客様の前にこのまま出るわけにはいかないわ。着替えをお願いしていいかしら?」
はい、かしこまりました!」
「あ、アバンス団長様は応接室にお通しして」
「女性もご一緒なのですが・・・」
「・・・銀の髪をしてらっしゃる?」
「えぇ」
「では、ご一緒に」
「はい、承知しました」
イザベラは、何故二人がここに来たのか検討もつかなかった。今頃になってあの時の事を責められるのか。王都に連れ戻されるのではないか。不安で押しつぶされそうになっていた。しかし、当主が怪我を負って伏せっている今、女主人である自分がしっかりせねばと自分に喝をいれる。自分は曲がりなりにも公爵令嬢だったのだ。王子妃になる事を夢見て教育を頑張って受けていた自分。いずれは王妃にと思っていた。その自分が、これしきで怯んでいてはいけない。いつかは向き合わねばならない時がくる。それが今なのだと。
コンコンコン
「失礼します」
イザベラは、ウィルフレッドとレティシアが待つ応接室へと入った。二人がどんな顔を自分に向けるのか怖くて顔を上げる事ができずにいた。
「イザベラ様、お久しぶりですね」
「え、えぇ・・・」
「何の前触れもなく突然訪問してしまってごめんなさい」
「いえ・・・」
「イザベラ様、顔をあげてください。私、イザベラ様と話がしたくてここまできたんです。昨日急に思い立って、ウィルにここまで連れてきてもらったんです」
イザベラはゆっくりと顔を上げると、そこには笑顔のレティシアがいた。
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