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休暇一日目⑤ブルーノと共に
しおりを挟む太陽も真上に差し掛かった頃、ウィルフレッドは、アバンス公爵家の玄関近くで白馬のブルーノに荷物を固定していた。
「ウィル、準備できた?」
「あぁ、いいぞ。それにしても、こんなに急いで出なくてもよかったんじゃないか?」
「折角いい天気なんだし、時間も無限じゃないの。それに、ウィルと二人で出かけるの楽しみにしてるのよ?」
「!」
ウィルフレッドは弾けるような笑顔を見せると、ブルーノの背に軽やかに跨る。そしてレティシアに向けて手を伸ばし、軽々と引き上げた。いつしかの湖へのデートの時と同じように、後ろからレティシアをしっかりと抱きしめ手綱を握る。そこへ、公爵夫妻とルシアンが見送りにやってきた。
「今朝話を聞いたばかりなのに、もう出発とはな」
「二人とも気をつけて。帰ったらたくさん話を聞かせてちょうだい」
「では、行ってまいります」
「お義父様、お義母様、ルシアン、行ってきます」
「はい、お義姉様。お兄様もお気をつけて」
「あぁ」
ウィルフレッドが合図すると、ブルーノは静かに歩き出した。ブルーノのゆっくりとした歩みとは似つかわしくないほどに、ウィルフレッドの心は踊っていた。
公爵邸は、王都の中央に位置する王宮からそう遠くない場所に位置している。公爵邸から出れば、王都の街中を通って行く事になる。白馬というだけで目立つ上、この国に白馬はブルーノのみ一頭しかいない。白馬に乗るのは騎士団長であるウィルフレッド・アバンスだというのは有名だ。単騎でも珍しい上、騎士達が馬で集まると、王子達の馬よりも目立ってしまう。つい視線を集めてしまう事、その事を今、馬上から思い知る事になった。
「シア、なんか物凄く見られている気がする」
道のりを進むにつれ、ウィルフレッドが段々と不機嫌になって行く。
「男達がシアを見てる。もう俺の妻になったと言うのに・・・」
「見てるのは私じゃないと思うわよ?白馬に乗るのは騎士団長って皆知ってる事実でしょう?王都じゃ有名だもの」
「だからと言ってあんなにジロジロと」
「皆、祝ってくれてるみたいだわ」
「え?」
「ふふっ、私たちなりの結婚パレードね!」
無邪気に笑うレティシアに、ウィルフレッドはそんな考えもあるのかと、驚いていた。大それた事件があり、結婚式を挙げることが叶わなかった事、ただただ落ち込んでいただけの自分。レティシアは強く、常に前を向いている。そして、沈み切っていた自分を、いとも簡単に幸せな気分にしてくれる。今では、レティシアを捕まえた以前の自分に、よくやったと褒めてやりたいとさえ思っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
次回
ちょ、ちょっと、レティシア!大きな声で言わないでよ!
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