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休暇一日目③二人の提案に
しおりを挟む「おはようございます・・・兄上、新婚早々甘えてるんですか?」
ウィルフレッドがレティシアを膝に抱えて抱きしめたまま、擦り寄っているように見えたルシアンは、兄の姿に食堂に入るなりため息をついた。
「まぁ、ルシアン。そう言ってやるな。さすがにウィルフレッドも今回の事には堪えているらしいからな」
「そうですね・・・兄上は誰よりも結婚式を待ち遠しそうにしてましたからね」
ぐいぐいとレティシアの肩に額を押し付けているウィルフレッドだったが、レティシアが顔を上げさせる。
「ウィル、みんなに話があるのよね?」
「話?ウィルフレッド、何かあるのか?」
「えぇ、シアと朝方話し合ったのですが・・・」
ウィルフレッドは確認の意味も込めてレティシアの顔を見て、にこっと微笑む。
「そう勿体ぶらないでちょうだい?何?結婚式の話?」
公爵夫人クラウディアは続きを急かす。
「いえ、折角10日も休みを貰ったので、二人で旅をしようと思いまして」
「旅?どこに行くのだ?公爵領の別荘にでも行ってくるか?」
「それもいいと思いますので、帰りにでも寄ってこようと思います」
「ということは、別に目的地があると言うことだな?」
「はい、西の辺境伯のところへ行ってこようと思います」
「辺境に・・・東ではなくてか?」
「お義父様、ベルモンドのお父様もお姉様も結婚式の出席のために王都に来ておりましたから、まだ今は、タウンハウスに滞在しています。ですから、東の辺境に行っても誰もおりませんわ」
「そうだったな。だが二人だけで行くのか?」
「えぇ、そのつもりです」
「護衛やメイドは?」
「護衛は要りません。俺を誰だと思っているんです?これでも近衛の騎士団長ですが?」
「うん?ひ弱なご令嬢に刺されて一ヶ月も休んでいた騎士団長は誰だったか?」
「・・・それは、シアを庇うため咄嗟に・・・」
「まぁ、ルド、いいじゃない?でも、メイドもいらないのね?」
「えぇ、姉は完全に貴族令嬢として育ってきましたが、私は幼い頃に母を亡くしています。メイド達が世話を焼いてはくれましたが、お転婆故に街に出ては民の皆さんに色々と教わったものです。街の女性が私の母代わりでもあるのです。ですから、自分の事は一通り自分でできますの」
「全く、頼もしい義娘だな。わかった。気をつけて行くんだぞ?」
「はい、承知しました」
報告は済んだものの、ウィルフレッドは捨てられるかもしれないという不安に、レティシアを離そうとはしなかった。膝に乗せたまま、運ばれてきた朝食をスプーンやフォークでせっせとレティシアの口に運び、甲斐甲斐しく世話を焼いては満足そうに頬を緩めていた。そしてあーんも強請って、ルシアンに呆れられたのは言うまでもない。
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次回
ウィル、さすがにそれは持っていけないわ
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