騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

文字の大きさ
上 下
254 / 544

穏やかな初夜

しおりを挟む


「あったかい・・・」

「あぁ」


後ろからレティシアを抱きしめて二人でお湯に浸かる。ウィルフレッドが首や肩に額を擦り寄せてくる度に、髪があたりくすぐったい。


「・・・シア・・・結婚式」

「何?」

「ちゃんと結婚式したい」

「・・・んー・・・すぐには無理よ?」

「どうして?」

「準備に時間がかかるの」

「ドレスも指輪もあるんだぞ?」

「それだけじゃないわ。結婚式を挙げる教会だって、参列者だって、こちらの都合だけで急には無理なの」

「・・・でも・・・」

「王宮が大変な時、事情は詳しくはわからないけど、そんな時に派手にお祝い事なんてできないわ」

「・・・そうだな・・・」


ぎゅっとウィルフレッドの腕に力が入る。レティシアは、その腕を優しく撫でて宥める。この人はどうしようもない人だ。いつもは堂々としていて、自分の思うように我儘だって言ってきた。だが、少しでも不安になれば途端に弱くなる。泣き崩れて、わんわん泣いて、ぐずぐず言って甘えてくる。この人には私が必要だと再確認するレティシア。


「ウィル、そろそろあがりましょう?」

「そうだな」


湯から上がりバスタオルを掴むと、レティシアをそれで包み寝室へと運んでいく。ゆっくりと寝台に下ろし、自身も寝台に横になり、レティシアを後ろから抱きしめた。しばらくしても、首や肩にすりすりと頭を擦り寄せているだけで、特に進展はない。そして、レティシアの瞼が重たくなってきて、少しずつ夢へと引き摺り込まれていく。


「シア・・・愛してる」

「うん・・・」

「シアは?」

「・・・ん?」

「愛してるって言って」

「うん・・・うん・・・」

「シア?」

「・・・うん」

「あぁ・・・寝ちゃうかな・・・」

「ウィル・・・」

「何?」

「好き・・・愛して・・・る」

「俺も、愛している」

「うん・・・う・・・ん」


うつろな返事を繰り返していたレティシアだったが、しばらくするとすぅすぅと寝息を立て始めた。レティシアが自身の腕の中で寝ている間はどこに行く事もない。だから安心して眠りにつける。だが、もし明日朝、愛しいレティシアが腕の中から消えていたら・・・そう思うと、眠れないウィルフレッドだったが、レティシアが腕の中にいるというぬくもりと、丸二日眠っていなかった事で限界がきたのか、徐々に眠りに落ちていった。夜中に何度も目が覚め、そのたびレティシアが腕の中にいるか確認をし、安心し、また眠りにつく。よく寝れたとは言い難いが、そうでもしないと安心して眠る事ができなかったのだ。







ーーーーーーーーーーーーー

次回

じゃあ、ウィルに提案があるわ




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...