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穏やかな初夜
しおりを挟む「あったかい・・・」
「あぁ」
後ろからレティシアを抱きしめて二人でお湯に浸かる。ウィルフレッドが首や肩に額を擦り寄せてくる度に、髪があたりくすぐったい。
「・・・シア・・・結婚式」
「何?」
「ちゃんと結婚式したい」
「・・・んー・・・すぐには無理よ?」
「どうして?」
「準備に時間がかかるの」
「ドレスも指輪もあるんだぞ?」
「それだけじゃないわ。結婚式を挙げる教会だって、参列者だって、こちらの都合だけで急には無理なの」
「・・・でも・・・」
「王宮が大変な時、事情は詳しくはわからないけど、そんな時に派手にお祝い事なんてできないわ」
「・・・そうだな・・・」
ぎゅっとウィルフレッドの腕に力が入る。レティシアは、その腕を優しく撫でて宥める。この人はどうしようもない人だ。いつもは堂々としていて、自分の思うように我儘だって言ってきた。だが、少しでも不安になれば途端に弱くなる。泣き崩れて、わんわん泣いて、ぐずぐず言って甘えてくる。この人には私が必要だと再確認するレティシア。
「ウィル、そろそろあがりましょう?」
「そうだな」
湯から上がりバスタオルを掴むと、レティシアをそれで包み寝室へと運んでいく。ゆっくりと寝台に下ろし、自身も寝台に横になり、レティシアを後ろから抱きしめた。しばらくしても、首や肩にすりすりと頭を擦り寄せているだけで、特に進展はない。そして、レティシアの瞼が重たくなってきて、少しずつ夢へと引き摺り込まれていく。
「シア・・・愛してる」
「うん・・・」
「シアは?」
「・・・ん?」
「愛してるって言って」
「うん・・・うん・・・」
「シア?」
「・・・うん」
「あぁ・・・寝ちゃうかな・・・」
「ウィル・・・」
「何?」
「好き・・・愛して・・・る」
「俺も、愛している」
「うん・・・う・・・ん」
うつろな返事を繰り返していたレティシアだったが、しばらくするとすぅすぅと寝息を立て始めた。レティシアが自身の腕の中で寝ている間はどこに行く事もない。だから安心して眠りにつける。だが、もし明日朝、愛しいレティシアが腕の中から消えていたら・・・そう思うと、眠れないウィルフレッドだったが、レティシアが腕の中にいるというぬくもりと、丸二日眠っていなかった事で限界がきたのか、徐々に眠りに落ちていった。夜中に何度も目が覚め、そのたびレティシアが腕の中にいるか確認をし、安心し、また眠りにつく。よく寝れたとは言い難いが、そうでもしないと安心して眠る事ができなかったのだ。
ーーーーーーーーーーーーー
次回
じゃあ、ウィルに提案があるわ
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