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あなたの手で
しおりを挟むウィルフレッドの言葉に、レイバンは涙を滲ませながらも穏やかな笑みをむけた。
「団長はどこまでも私を信じてくれるんですね・・・本当に上司に恵まれていたようです。しかし、私みたいな人間が、騎士なんかやっていてはいけないんですよ。私はあの日、両親の命が奪われた日、私ではなくなったんですよ」
「お前がお前でなくなるわけがないだろうが。レイバンは面倒見のいい近衛の副騎士団長だ。それ以外の何者でもない。そして俺の信頼のおける部下だ」
「・・・ありがとう・・・ございます。その言葉だけで、救われた・・・気がします」
レイバンは、その言葉と共に、崩れるように床に膝をついた。
「アイオロス、3人は拘束して牢に捉えておけ」
「はい」
男達の拘束から逃れることのできたヴィンセントは、のろのろと国王レオナルドの元に歩み寄る。
「父上・・・」
「あぁ・・・ヴィンセント」
「大丈夫ですか?すぐに医者を」
「大した怪我ではない」
「いえ陛下、失礼ながら、出血が多いです、医者に診てもらったがよいかと」
「そうか・・・仕方あるまい」
「おい、ヘイズ医師をすぐに呼べ」
ウィフレッドは、部屋の外に待機していた騎士達へと声をかけた。
「レイバン、立て。お前も牢に入れる」
「えぇ、団長自らなんて嬉しいですね」
力なく笑うレイバンをウィルフレッドは無理矢理立たせると、国王レオナルドに向き直る。そしてレオナルドが静かに話し出した。
「レイバンよ、お前の過去の話。私は忘れはせん。犯してしまった過ちは消えない。お前の今回の過ちもだが、私の過去の過ちもしかり。私は亡き王妃に誓ったのだ。この国を良くしていくと。私はもう間違えたりはせん。お前に誓おう。これからのこの国を見ていてくれぬか。そしてまた間違いを起こそうものなら、またこうやって私の命を奪いに来い。王族とて完璧な存在ではない。時に間違った選択をし、過ちを犯すこともある。その時は、お前のように叱ってくれる人間が必要だろう。レイバンよ、お前の事は私も忘れはせん」
「そお言葉を聞けただけで・・・随分と心が軽くなりました。陛下・・・ありがとうございました」
「では、陛下、私はレイバンを牢へと連行します。アイオロスを再度つけますので、手当後ゆっくり休まれてください」
「あぁ、すまない」
ウィルフレッドは一礼し、レイバンと共に部屋を辞して行った。
「ヴィンセントも部屋に戻りなさい」
「しかし!」
「心配はいらん。ウィルフレッドが呼んだ騎士達もきている」
「・・・はい・・・」
ヴィンセントは何もできなかった事を憂い、肩を落として自室へと戻っていった。
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次回
お前をここに入れる日が来ようとはな・・・
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