騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

文字の大きさ
上 下
239 / 544

信頼のおける部下だった

しおりを挟む


レイバンの愚行を止めようと必死だったヴィンセントの行動は裏目に出てしまった。レオナルドの視線は、父親ではなく、国王だった。


「親子喧嘩なら後でやってくれますか?いや・・・後ではもうないですね」



その時だった。



バァァン!!



「レイバン!」

「・・・団長・・・」

「これはどういう事だ?何故こんな事をしている」


国王の部屋に入り、状況を確認したウィルフレッドはレイバンを睨みつける。


「・・・早かったですね。陛下を亡き者にしてから捕まえて貰おうと思ったのに、無駄話が過ぎたようです。少しだけ待ってて貰えます?」

「待つわけないだろう」

「そうですよね、今日は大事な婚約者殿との結婚式ですからね。早く帰りたくて仕方ないでしょう」

「それを知っててなんでこんな事を」

「こんな日だからですよ。幸せになろうとしているのを邪魔してやりたかった。一生悔いに残ればいいと思っていました。そして、私の事を一生憎んで覚えていてくれればと」

「レイバン・・・お前を忘れるわけないだろう。お前は誰よりも努力していた。周りに気を配り、一人の脱落者もなく若い騎士達を育てている。そんなお前が騎士団には必要だ。俺はお前を誰よりも信頼している」

「・・・団長・・・」

「剣を下ろせ」

「いえ、それは聞けません」

「そうか」


微かな動きだった。ウィルフレッドが騎士達にしかわからない程の微かな頷きを見せると、後ろに控えていたアイオロスがヴィンセントを捉えていた男達に、ウィルフレッドは刃先を国王に当てているレイバンに飛びかかった。ヴィンセントを捉えていた男達は何の合図もなくアイオロスが向かってきた事に驚いてたじろぎ、いとも簡単にのされてしまった。そしてウィルフレッドは、レイバンの腕を掴み、剣を払い除けた。


「レイバン、終わりだ」

「えぇ、そうですね・・・」

「気付いたのに避けなかった。何故だ?」


ウィルフレッドがアイオロスに合図した微かな動き、レイバンは気付いていた。長年この男の側にいて、その合図はいつでも自分に送られてきたものだったのだから。


「あなたに捕まりたかった。陛下の命を奪っても何も返ってこない。生きる意味さえ無くしていた私に光を見せてくれたのは団長でした。あなただけは・・・団長だけは・・・私を一人の男として認めてくれたんです。周りが孤児だ、平民だと蔑む中、団長だけは私の実力を、努力を認めてくれました。私の最後は団長の手でと思ったんです。誰でもなくあなたに」

「こんな事をせずとも、俺の隣にずっといればよかっただろ!俺がいつお前を見放した?俺がいつお前をいらないと言った!」


ウィルフレッドも、レイバンも、瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。







ーーーーーーーーーー

次回

これからのこの国を見ていてくれぬか。そしてまた間違いを起こそうものなら、またこうやって私の命を奪いに来い



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...