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近衛になった理由
しおりを挟むレイバンが、国王レオナルドに剣を向け、じわりじわりと歩み寄っていた中、勢いよくドアが開かれた。
バンっ!!
「父上!!」
「・・・ヴィンセントか」
「・・・はぁ、はぁ・・・ご無事でしたか」
ヴィンセントは、ほっと息を吐いたのも束の間、すぐにレイバンへと向き直ると、鋭い視線で睨みつける。
「おい!レイバン、なんのつもりだ!国王に向かって剣を向けるとは、余程死にたいと思える」
「死?・・・何故私が死なねばならないのです?私、何かしましたか?ただ生きていただけで、両親を奪われ、ただ生き延びたせいでお前達のせいだと罵られ・・・何が悪かったというのでしょう。教えて頂けませんか、殿下」
「何が言いたい」
「あなた方王族は、絶対的な存在ですからね・・・わからないでしょうね」
レイバンは引き連れてきた男達に視線を向ける。
「お前達、殿下を捕らえろ。そこの側近は部屋の外に放り出せ」
レイバンの一声で、騎士を装っていた男達がすぐさま動き出した。一人の男がラウスに襲いかかり、腹に重たい拳を打ち込んだ。
「うっ!」
ラウスが床に蹲ると、そのまま引きずるようにして外へと放り出され、部屋の扉は音を立てて勢いよく閉められた。
「殿下、私は努力して、自分の実力でこの地位まで上りつめました。誰の為でもなく、自分の為です。近衛騎士になる事が誉?馬鹿馬鹿しい・・・私が近衛になったのは、あなた方に近付く為ですよ」
寝台のフチに座っていた国王レオナルドの首に、レイバンの持つ剣の刃先が微かに触れ、金属のひんやりとした感触が伝わってくる。
「あなた方は国を守る為に戦ったにすぎないでしょう。確かに戦いは優勢に働き、戦には勝利しました。しかし、めでたしめでたしで終わってもらっては困るのですよ。戦の地にされたことで、私達は全てを失いました。家族、家、友人、資産・・・あげればキリがありません。その後の生活が幸せだったのなら、どうにか乗り越える事もできたでしょう。今でも夢を見るのですよ。目の前が真っ赤になるんです。7歳の子供には衝撃が過ぎました。目の前で人が殺されるところを見てしまったのですからね。しかも、自分の父親と母親です」
レイバンは、眉間に皺を寄せていた。当時の事を今でも鮮明に覚えている。国王レオナルドとヴィンセントに向けて静かに語る。その内容は、7歳の子どもが抱えるにはあまりにも衝撃が大きく、残酷であった。
ーーーーーーーーーーーーー
次回
【レイバンside】
殺すなら、私だけにしろ
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