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静かな王宮
しおりを挟むコルテオと共に国王の私室へと向かったウィルフレッド。
「やけに静かだ・・・」
「あぁ、深夜だから・・・というわけではなさそうだな」
王宮の中を進むも、騎士の一人も見かけない。深夜といえど、王宮は交代で警備兵が必ず待機している。その騎士の誰一人として見かけない。緊張しながらも、歩みを早めていく。しばらく進むと、通路の奥から、一人の騎士がこちらに向かってくるのが見えた。
「アイオロス」
「団長!」
「何故、お前がここにいる?」
ウィルフレッドが、向かいから歩いてきた、アイオロスと呼ばれる騎士に向かって、鋭い目を向ける。
「お前は、今、陛下の側についているはずだ。何故、こんなところをうろついている!」
「それなのですが、今は、副騎士団長がついておられます」
「レイバンが?」
「はい、王宮内に、ランドルスト公爵令息様に加担した賊や、ソハナスの関係者が潜り込んでいるといけないから、見回りをと」
「陛下の側にはレイバン一人か?」
「いえ、数人ほどの騎士を従えておられましたが・・・近衛の騎士ではありませんでした。見かけない顔でしたので」
ウィルフレッドは、まずいことになったかもしれないと、顔を顰めた。
「コルテオ・・・頼みたい事がある」
「何だ?」
「俺の指示だと言って、待機中の騎士を集めてほしい」
「あぁ、わかった」
コルテオは返事をすると、踵を返し、近衛騎士の駐屯所へと向かっていった。
「アイオロス、レイバンは陛下に何かをしようと企んでいる可能性がある」
「副騎士団長がですか?」
「あぁ、俺もにわかには信じがたいが、これは、マクシミリオンが企てた反逆行為だと思っていた。だが、マクシミリオン本人から話を聞いた俺とレイバン・・・それと、北と西の辺境伯と直接通信にて連絡をとったコルテオ・・・状況と、感じた事を合わせると、どうしても辻褄が合わない事があるんだ」
「それは・・・?」
「国王の寝首をかけば後はソハナスが侵攻を進めて国を乗っ取る・・・マクシミリオンは、ソハナス側がそう言ったと言っていた。だが、謹慎で屋敷に監禁されていたマクシミリオンが、いくら宰相の息子で、他国との繋がりが多いオリバーが関わったとしても・・・そう簡単にソハナス側と組むほどになると思うか?それに、マクシミリオンが陛下の命を奪ったとして、それを知る事がどうやってできる?よくよく考えると疑問が湧くばかりだ」
「首謀者は副騎士団長だと?」
「ソハナスの話が嘘だとは言い切れんが・・・何かの策略であったとしたならば・・・俺達は踊らせられているだけだったという事になる。マクシミリオンも、利用されただけではないかと・・・王宮の騎士がこれだけ減らされているのも、レイバンの計画のうちだとしたら・・・まずいな」
「それなら尚のこと、急ぎましょう」
「あぁ」
ウィルフレッドとアイオロスは、国王の私室へと向かい駆け出した。
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次回
お前達、この部屋には誰も近付けるな、頼んだぞ
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