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敵国の動きと援軍要請

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「ソハナス側は、陛下の寝首をかけば、後は任せろと言っていた。混乱に乗じて国を乗っ取る算段だと思う。俺は・・・こんな大それたことをできると父上に見せつけたかったのかもしれん・・・本当に情けないな。またこれで、呆れられるだろうな。もう、息子として診て貰えんかもしれんな」

「干渉に浸っても解決しない。マクシミオン。お前は、公爵令息という立場は失うかもしれん。殿下の側近に戻る事もできないだろう。敵を引き入れたのは自身かもしれんが、これを知っているのは幸いにも俺と、そこで聞いている副騎士団長のレイバンだけだ。オリバーは何も知らないなら、口止めさえしておけばいい。お前はバツが悪いかもしれんが・・・優秀な奴を失うのは惜しいからな」

「・・・俺を助けるとでも言うのか?」

「このままいけば、罪人として裁かれるだけだ。だが、嘘も時には役に立つ。話の流れを変えることができれば、少しは刑が軽くなるだろう」

「・・・何で俺にそこまでしてくれるんだ・・・」

「同じ公爵令息の立場・・・なんだろう?その辛さや大変さを知っているのも・・・俺達だけだ」


ウィルフレッドはマクシミリオンを安心させるように、静かに微笑んだ。


「・・・わかった、あんたに協力する。うまくいった暁には、褒美をくれ」

「褒美?何を望むんだ?」

「レティシア嬢を妻に欲しい」

「や、やるわけないだろうが!!」


マクシミリオンの要望に、ウィルフレッドは瞬時に鋭い目つきになると、大声を出した。


「冗談だよ。公爵家同士、大した交流もなく、あんたのことは遠目に見ているに過ぎなかった。だが、今回の事で、距離が近く感じるようになった。なんだろうか・・・勝手に友情みたいなものを感じている」

「友情を感じるのは勝手だが、シアはやらん」

「ふっ、本当に惚れ込んでいるんだな。羨ましいよ」

「誰にも渡すつもりはない。殿下にだって渡さなかったんだ。君にやるわけないだろう」


願いは叶わない。だが、マクシミリオンの表情からは陰りが消え、清々しささえあるように思える。


「ソハナスは、俺が国王の命を奪い、騒動を起こしている間に、奇襲を仕掛けると言っていた。今、この間にも、ソハナス側からは、軍が侵攻してきているはずだ。北の辺境伯には・・・申し訳ない事をした」

「申し訳ないと思っているだけで十分だ」


ウィルフレッドは、牢に背を向けると、レイバンに指示を出す。


「聞いていただろう?北の辺境に援軍を出せ。王都からは第一騎士団、第二騎士団から集められるだけの戦力を集めろ。それから、新婚早々申し訳ないが、師匠にも援軍を頼んでくれ。王都の騎士達より、距離も近ければ、実戦を重ねてきた者も多いはずだ。戦争英雄のクレイドル殿が負けるはずないが、一刻を争う。少しでも負傷者を減らすため、直ちに出兵させろ」

「御意、承知しました。それでは、コルテオに協力を依頼し、すぐさま駆けつけさせます」

「あぁ、頼んだ」




ーーーーーーーーーーーーー

次回

あんた騎士団長を辞めるつもりなのか?




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