上 下
223 / 543

オリバーは共犯者?

しおりを挟む


マクシミリオンと長話をしていたが、ウィルフレッドの心境は複雑だった。早く帰ってレティシアを安心させたい。つまらない欲のせいで、愛しいレティシアから離れて王宮に来なければいけなかった事に、ウィルフレッドはイラついていた。だが、それを見せたところで、余計長引かせる事になるだろうと予想もつき、表情に出さないようにしていた。


「イザベラは・・・泣いていなかったか?」

「出立時は泣いてはいなかったようだ。己の境遇と現状をしっかり理解していたのだろう。不安そうな表情ではあったが、最後には覚悟を決めたようだったと、支度をしたメイドが言っていたそうだ」

「・・・そうか・・・」

「お前も、ちゃんと兄なんだな。妹の事を心配する程度には」

「あいつは昔からヴィンセント殿下に恋をしていた。振り向いて欲しくて頑張っていた。だがそういう相手としては見て貰えなかった・・・俺はあいつに何もしてやれなかった・・・兄・・・失格だな」

「そう思うなら、全て吐け。長引かせては悪い方にしか向かない。イザベラ嬢の未来を明るいものにしたいなら、この状況はよくない」

「・・・そうだな・・・俺にできるのはそれしかないな・・・」


マクシミリオンは、静かに寝台に腰を下ろすと、ウィルフレッドの顔を見上げる。


「オリバーも謹慎中のはずだが、屋敷から抜け出している。オリバーは王都の街のある屋敷に滞在している。だが、あいつはこの計画には対して何も関わっていない。そしてあいつを匿っている屋敷の主も、家族も、一切関与していない。だから、悪いようにしないと誓ってくれたら全て話す」

「あぁ・・・だが、オリバー自身は謹慎を抜け出した事には多少お咎めはあるな・・・」

「・・・俺のせいで、オリバーにまで迷惑かけたな・・・オリバーは、自身の婚約者である、レイズヴェル伯爵家のアリシア嬢の所にいる。屋敷から抜け出した俺は、宰相の息子であるオリバーの伝手を使って、他国の貴族に繋いで貰った。オリバーの関与はそこまでだ。俺の計画や、行動は一切知らない」

「他国とは?」

「ソハナス国だ」

「・・・そうか・・・」


ソハナス国は、この国レヴァイユの北に位置する国だ。北の大地は険しく、作物が育ちにくい土地で、レヴァイユを通らなければ他国に行くことさえままならない。そんなソハナスは、常々レヴァイユに侵攻をかけてきていた。北の辺境領は、二十年前の戦争で武功をあげ、レオナルドの妹であり王女であった、ナタリアが、前王によって褒美として差し出され降嫁した領地だ。なんとも物のような扱われ方が話として広まっているが、実のところ、恋愛結婚である。北の辺境伯を務めるクレイドルは、元は王都にほど近い子爵家の次男。王都の学園を卒業後、辺境の騎士団に自ら志願。そこで武勲を立て、辺境の後継であった子息が、城で文官になりたいと継ぐ意識がなく、そのあとを、当時の辺境伯が、クレイドルに任せたのだ。ナタリアとは、学園で恋仲であったものの、結ばれない身分違いと互いに諦めていたが、戦争の武勲により、辺境伯当主になることが決まった事がきっかけで、ナタリア側から申し出したものだった。




ーーーーーーーーーーーーーー

次回

や、やるわけないだろうが!!




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

『番外編』イケメン彼氏は年上消防士!結婚式は波乱の予感!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は年上消防士!・・・の、番外編になります。 結婚することが決まってしばらく経ったある日・・・ 優弥「ご飯?・・・かぁさんと?」 優弥のお母さんと一緒にランチに行くことになったひなた。 でも・・・ 優弥「最近食欲落ちてるだろ?風邪か?」 ひなた「・・・大丈夫だよ。」 食欲が落ちてるひなたが優弥のお母さんと一緒にランチに行く。 食べたくないのにお母さんに心配をかけないため、無理矢理食べたひなたは体調を崩す。 義母「救護室に行きましょうっ!」 ひなた「すみません・・・。」 向かう途中で乗ったエレベーターが故障で止まり・・・ 優弥「ひなた!?一体どうして・・・。」 ひなた「うぁ・・・。」 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

冷遇される王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝この作品もHOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 これも全ては読んで下さる皆様のおかげです✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がるばかり。統治者としては優れている国王カルロスだが、幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした王女アリーヤには見向きもせず、冷遇していた経緯がある。常に公の場に連れ歩くのも側妃ベリンダ。おかげでクラウン王国の臣下らも側妃ベリンダを王妃扱い。はたから見れば哀れな冷遇妃アリーヤだが、実は王妃アリーヤにはその方が都合が良いとも……。 ※設定などは独自の世界観でご都合主義。おそらくハピエン♥️

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

そうだ 修道院、行こう

キムラましゅろう
恋愛
アーシャ(18)は七年前に結ばれた婚約者であるセルヴェル(25)との結婚を間近に控えていた。 そんな時、セルヴェルに懸想する貴族令嬢からセルヴェルが婚約解消されたかつての婚約者と再会した話を聞かされる。 再会しただけなのだからと自分に言い聞かせるも気になって仕方ないアーシャはセルヴェルに会いに行く。 そこで偶然にもセルヴェルと元婚約者が焼け棒杭…的な話を聞き、元々子ども扱いに不満があったアーシャは婚約解消を決断する。 「そうだ 修道院、行こう」 思い込んだら暴走特急の高魔力保持者アーシャ。 婚約者である王国魔術師セルヴェルは彼女を捕まえる事が出来るのか? 一話完結の読み切りです。 読み切りゆえの超ご都合主義、超ノーリアリティ、超ノークオリティ、超ノーリターンなお話です。 誤字脱字が嫌がらせのように点在する恐れがあります。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 小説家になろうさんにも時差投稿します。 ↓ ↓ ↓ ⚠️以後、ネタバレ注意⚠️ 内容に一部センシティブな部分があります。 異性に対する恋愛感情についてです。 異性愛しか受け付けないという方はご自衛のためそっ閉じをお勧めいたします。

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

処理中です...