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たった一人の兄妹
しおりを挟むウィルフレッドが、軟禁状態にあったマクシミリオンであれば知り得たはずの事を、数日行方をくらませていたのなら知らないかもしれないと口にしたイザベラの事。たった一人の兄妹であるイザベラの話は、マクシミリオンの瞳に不安の色を漂わせた。
「イ、イザベラはいつ嫁に行ったんだ」
「数日前だ。君が行方をくらましている間に決まった事だ」
「父上が決めたのか!?」
「いや・・・イザベラ嬢を妻に迎えたいとおっしゃった方が引き取った形だ」
「イザベラを・・・誰が・・・?」
「西の辺境伯、ゲオルグ・カルスヴァ殿だ」
「辺境伯だと!?あの方は・・・前任の騎士団長だった方だろう?歳は・・・父上とかわらない位だったと記憶しているが?」
「あぁ、そうだ。親子ほど歳が離れているな」
「なんでそんな所に!イザベラなら、もっと他に嫁ぎ先がいくらでもあったはずだ!」
「貴族牢に捕らえられた女性が、明るい結婚をできると思うか?」
「っ・・・」
「辺境伯は、騎士団長であったからこそ、君達の幼い頃をよく知っている。間近で見てきたはずだ」
「しかし!何故あの方なんだ!父上は、イザベラへの罰のつもりか・・・?」
「いや、それも陛下の温情だ」
「はっ・・・温情だと?親子ほど歳の離れた男に無理矢理嫁がせる事が温情だというのか?」
「あぁ・・・事件の事は緘口令が敷かれているとはいえ、街中で起こった事だ。誰が見ていたかわからん。あの場にいた騎士達は誰にも話さないとは思うが、王都の街で、見かけた者から噂が広まってもおかしくない。その状況下で、イザベラ嬢を外に出しても、針の筵だろう。だから、その話を見聞きする事なく、偏見を持たない土地に住まわせた方がイザベラ嬢のためだとの判断だ。そして、イザベラ嬢を妻にと望んだのは、辺境伯本人だ」
「娘ほどの若い女がよかったのか?」
「若い女か・・・辺境伯、いや、師匠がイザベラ嬢を意識したのは4歳と幼かった少女の頃だ」
「はぁっ!?幼女趣味かよ!危険なオッサンじゃないか!」
「まぁ、はたから見ればそうかもしれん。だがな、可愛いからとか、そう言う事ではないのだ」
「どう言うことだ・・・」
「幼い頃は、言われるがまま、とにかく一生懸命何事もこなそうとしていたイザベラ嬢の事を微笑ましく思っていたらしい。歳を重ねていくごとに、いずれどちらかの殿下の妃になるかもしれないという公爵令嬢の立場を理解していたイザベラ嬢の、真剣さに美しさを感じていたそうなんだ。ずっとそばで見守っていらしたんだ。だがな・・・イザベラ嬢の瞳には一人の男が映り出した」
「・・・ヴィンセント殿下だな」
「知っていたか」
「当たり前だ。毎日一緒にいたんだ」
「恋するイザベラ嬢を間近で見ているもの辛く、相手にされないと鼻から諦めていた師匠は・・・後継がいない辺境に名乗り出て騎士団長を辞任した。今回イザベラ嬢の事を知ったのは、夜会の出席の為に王城にいらしていて、いろんな変化を知った中の一つだった。イザベラ嬢の現状を知った師匠は、早かったよ」
ウィルフレッドは、辺境伯であるゲオルグが、国王レオナルドと自分に許可を求め、イザベラを強く望んだ事。イザベラが辺境でいい出会いがあるならば、相手を見定め、保護者の役割をし、手放す覚悟もあると言った事をマクシミリオンに話して聴かせた。
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次回
・・・俺のせいで、オリバーにまで迷惑かけたな・・・
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