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公爵令息という立場
しおりを挟む「・・・何故かって?わからないか?」
寝転んでいた体勢から、マクシミリオンは体を起こし、寝台の上に胡座をかくように座った。
「わからないな。何故陛下を狙うような真似をしたんだ」
「別に陛下じゃなくてもよかったさ」
「何?」
「・・・俺の明るい未来はもうない。手に入れたかった女も手に入らなかったしな」
「女・・・シアの事だな」
「あぁ、あんたはいいよな。あんないい女を妻にできるんだ」
「君だって公爵令息で、ヴィンセント殿下の側近で・・・シアでなくとも気にいる令嬢を娶ることができたはずだ」
「そうかもしれないな・・・でも、羨ましかったんだよ」
「羨ましかった?」
「あんたはあれだけ大勢の前で随分と情けない姿を晒した。だが、その姿でさえ彼女は受け入れた。あんたの全てを肯定した」
「シアはそういう女だ」
「そうさ・・・あんただって俺と同じのはずだ」
「同じだと?何が同じなんだ」
「公爵令息であり、嫡男という立場がさ」
「そうだな。それがどうした」
床をじっと眺めながら静かに語るように話していたマクシミリオンは、ゆっくりを視線をウィルフレッドに向ける。
「いつも皆から期待され、少しでも相応しくないことをすれば軽蔑される。いつもお手本でなければならなかった。甘えは許されず、結果を出しても当たり前だとしか評されない」
「そうだな。公爵家という所に生を受けた以上は一生付き纏う呪いのようなものかもしれん」
「だろう?だがあんたはなんだ・・・いい女を手に入れて、顔には幸せですと書いてある。地位や顔や金に寄ってこない女なんてそうそういない」
「確かに同感だ。シアはそんなものいらないと言った」
「いらない・・・か」
「数日前にも諦めきれないヴィンセント殿下が、俺の不在を狙って屋敷に突然訪問して、シアを攫おうとした」
「・・・ヴィンセント殿下・・・相当惚れてんだな。いい女だもんな・・・俺も、同じ事してたかもしれないな」
マクシミリオンは、ふっと苦笑を浮かべるとため息をついた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
そして・・・俺だけには甘い
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