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薔薇が引き起こした変化

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国王の助力もあって、セオドリックの誤解と、アプローチから逃れた二人。レティシアは、ウィルフレッドに抱えられたまま執務室に連れてこられた。結局、まだ膝の上から解放されずにいる。


「はい、あーん」

「あーん・・・」


ウィルフレッドの口にサンドイッチを運ぶレティシア。


「どうしたの?」

「どうもしないぞ?」

「なんだか元気ない・・・のかしら?」

「元気・・・ないわけじゃないが・・・勘違いしたのが情けなくて・・・」

「何を?」

「お腹すいたって」


レティシアはじっとウィルフレッドを見つめる。


「どこもかしこも甘い・・・シアは甘い・・・」

「ふふっ、何も勘違いではないわ」

「?」

「どっちも意味を込めていたもの」

「・・・っ!?」

「ウィル、愛してるわ」

「シア・・・俺もだ」


ウィルフレッドはたまらず、レティシアの唇を塞ぐようにキスをする。ちゅ、ちゅっと軽いキスだったが、次第に深く求め合うようなキスへと変わっていく。


「・・・」

「どうしたの?」


顔が離れたかと思い、レティシアはウィルフレッドの顔を見る。眉を下げて切なそうな顔で見ていた。


「ここが屋敷の自分の部屋なら・・・と思った」

「流石にここではね・・・誰が来るかわからないもの」

「あぁ・・・そんなシア、他の男には見せられない」


コンコンコン


そんな時、ノックがなった。


「入れ」

「失礼します」

「レイバン・・・どうした」

「何ですか、その心底嫌そうな顔は・・・」

「用件は何だ」

「お届け物です」

「花?誰からだ?」

「王宮に滞在されているセオドリック殿下からです。レティシア嬢にと」

「な、何だと!?」

「・・・花に罪はないけれど・・・これは、ねぇ・・・」


二人の前に差し出されたのは、108本の赤い薔薇。結婚してください。その意味を持つ薔薇を眺め、二人はため息をつく。


「あの王子、中々引き下がらんだろうな・・・ヴィンセント殿下よりタチが悪いかもしれん・・・」

「花に罪はないけど、受け取れないわ。ミシェリア王女殿下に贈ってあげて?部屋から出れずに退屈しているでしょうしね?」

「それはいい案だ」


二人からの指示で薔薇はレイバンの手によってミシェリアに届けられた。最初は話を聞いて睨みつけてきたミシェリアだったが、久しぶりに目に入れた綺麗な花。次第に心にあたたかいものを感じるようになった。


「あの薔薇、どなたからレティシア嬢に贈られたものだったの?」

「セオドリック殿下だそうですよ」


部屋の外に待機する騎士達にそう聞いたミシェリアは言った。


「私が頂いてしまってごめんなさいと伝えてくれる?」

「は、はぁ」


騎士はミシェリアの変わりように困惑を隠せなかった。





ーーーーーーーーーーーーーーー

次回

一度でいいんです、お話しする機会を頂けませんか?




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