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王子は必死
しおりを挟む「まただわ」
「殿下か?」
「えぇ、余程エリスの事、気になっているらしいわね」
今、レティシアの手には一通の手紙がある。差出人は第一王子ヴィンセントだ。王宮へとエリスティアをともなって登城した際に、ヴィンセントはエリスティアに一目惚れをした。エリスティアの事を何も知らないヴィンセントは、レティシアの思惑にまんまと乗せられている事に気付く事はない。ヴィンセントには、エリスティアはどこかの貴族の令嬢のような紹介をしている。勝手に、身分が違うため結ばれるのは難しいという解釈をしたようだった。レティシアに届くヴィンセントからの手紙から、ひしひしと伝わってくる。
『エリス嬢に会いたい』
『城にまた連れてきてはくれないか?』
『エリス嬢は公爵邸に滞在しているのか?』
『エリス嬢に贈り物がしたい』
『エリス嬢は花を受け取ってくれるだろうか?』
ヴィンセントの必死な姿が垣間見える。さすがに放っておくわけにはいかず、エリスティアに相談を持ちかけた。
「エリス?これ、どうする?」
「随分と気に入られてしまったみたいね?でも、このままでは他の令息達と変わらないわ。レティとアバンス団長様の関係性を見ていて思うのよね。私も甘えられてみたいし、ダメな部分も見せて欲しい。格好いいところなんて、いつでもいくらでも誰だって見る事ができるわ。私にしか見せない姿を見てみたいものね」
「・・・もっと足掻いて欲しいわね。どうしても欲しい、そう思ったとき、殿下はきっと権力を使おうとするわ。王命だとかまた言いそう・・・」
「私相手にそれは国交問題よ?」
「それがわかっていればそんな事言わないはず。だけど、あの感じなら言いかねないのよね・・・」
「ヴィンセント殿下って、外交にはあまり出ていなのよね?」
「えぇ、第二王子のアルバート殿下のほうが、留学経験もある上に、手腕があるのよ」
「他国の事をもっと知っていたなら、私の事を知らないわけないもの。不得手をそのままにしていたツケよね」
そうして届けられた手紙で、アルバートを呼び出したヴィンセントは事実を知ることになる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
次回
【ヴィンセントside】
エリスという女性を知らないか?
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