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偶然を装って
しおりを挟む「・・・見かけないご令嬢だな」
「初めまして」
エリスティアは向かいから歩いてきたヴィンセントにニッコリと微笑みかけるも、対して興味はないとばかりに視線を逸らす。
「どこのご令嬢なんだい?名を伺っても?」
「エリスです。今はそれしか言えませんの」
「そうか・・・エリスか・・・」
じっと、エリスティアを見つめるヴィンセントが次の言葉を思案している時だった。
「エリス!」
「あぁ、レティ」
「君はレティシア嬢の知り合いなのか?」
「えぇ、レティとはお友達ですわ」
「エリス、はぐれてしまってごめんなさい。探すのに時間がかかってしまったわ」
「大丈夫よ、さぁ、行きましょう」
「えぇ、今日は、公爵邸でおもてなしするわ」
「楽しみ!」
「では、ヴィンセント殿下、失礼します」
にっこりと微笑むレティシア。これまでだったら、ヴィンセントは見惚れてしまっていただろう。だが、今は、レティシアの隣にいる女性が気になって仕方がなかった。
「・・・私に興味がないのか・・・?そんなご令嬢が他にもいたんだな・・・」
ヴィンセントは、レティシアとエリスティアが去っていくのをじっと見つめていた。
そしてその日の夜、公爵邸では、エリスティアの歓迎で食事が振る舞われていた。
「まさか、レティシアちゃんのお友達が隣国の王女様だなんて!」
「公爵夫人、王女様と言っても、末娘の第三王女ですわ。長兄がいますし、私は側妃の娘ですから、大した権力もありませんわ」
「だけど、二人はどうやって知り合いになったの?」
「エリスとは、辺境の国境で知り合いましたわ。砦に一部子どもなら抜けれる穴がありましたの。穴から出入りして、互いに国の話をしてました」
「私は王女です。中々親友と言える友達を作る事はできませんでした。そんな中で知り合ったレティ・・・仲良くならないはずがないですわ。それに、レティは活発で、私の知らない事をたくさん教えてくれました。かけがえのない友達ですわ」
女性三人が盛り上がる中、男性陣はその様子を微笑ましく眺めていた。
「それで、お義父様にお願いがございますの」
「おぉ?可愛い義娘のおねだりだ、言ってごらん?」
「エリスを守って欲しいのです」
「守る?誰かに狙われているのかい?」
「狙われているのは命ではないので、その点は安心してください。エリスを追いかけて必死になる男が出てくるはずです。しばらく公爵邸に留まって貰おうと思いますが、その男から匿って欲しいのです」
「ほぅ・・・まぁ、エリスティア王女も何だか、レティシアに通じるものがあるからな・・・だとすると、殿下か」
「その通りです」
にっこりとレティシアは微笑んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
ヴィンセント殿下が、まだまだ勉強不足だと言う事がよくわかりましたわ
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