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突然の訪問者
しおりを挟む今日も今日とて、ウィルフレッドは騎士団に行くのを渋って外出するのに相当な時間を要した。やっと騎士団長を出勤させれたと安心したのも束の間。新たな問題が降ってきた。
「ん?何かしら・・・」
一階が何やら騒がしい。誰か客人でも来たのか。そんなことを考えているうちに、声が近付いて来たかと思えば勢いよくドアが開いた。
バタン!
「レティシア嬢!」
「ヴィンセント殿下ではありませんか、こんな所までいかがなさいましたの?」
レティシアがこんな所と言うのも無理はない。レティシアはまだ婚約者という立場だが、公爵邸に住む事になった日から使用している私室にいた。ウィルフレッドが頑なに譲らず、自分の隣の部屋に準備した部屋だ。もちろん二つの部屋は内扉で行き来できるようになっている。
「すまない!会いたくて急いでいたらここまで来てしまった」
悪びれもせずヴィンセントは部屋に居座る。その様子を部屋の外からは義父である公爵が心配そうに見ていた。
「殿下、何のご用事でしたか?」
「用事がなければ会いに来てはいけないか?」
「そうとは申しませんが、いささか礼儀に欠けますわ」
レティシアはジト目でヴィンセントを見るも、効き目はないようだ。
「いてもたってもいられなくてな・・・」
「何がです?」
「結婚式だ!」
「結婚式がどうかなさいましたの?」
「・・・君は本当にいいのか?このままウィルフレッドの嫁になるのか?」
「えぇ、そのつもりですが・・・それがどうかなさいましたの?」
「っ!?・・・君は!公爵夫人で満足なのか!?私を選べば将来は王妃だぞ?国の女性の頂点だ。その地位が欲しいとは思わないのか?」
「全く」
「全くだと!?」
「えぇ、微塵も興味がありませんもの」
「微塵もって・・・ウィルフレッドより、私の何が劣っていると言うのだ?」
「何も劣ってはおりませんわ。全てにおいて、殿下はウィルよりも勝っていると思います」
「では・・・どうして・・・」
「前にも申しましたでしょう?殿下は私に要求をしただけ。自身の地位を、身分を使って、私を王都に呼び寄せて妃に据えようとしたと」
「・・・それはすまなかったと思っている。私は、まだ未熟だったのだ。だが、今は違う。君でないといけないとわかったのだ!数日後に結婚式があれば、ウィルフレッドと君は夫婦となる。君を手に入れられなくなる・・・だから、だから!君を攫いに来たまでだ!」
ヴィンセントが声を荒げ、レティシアに近づき腕を掴もうとした。レティシアは後ずさるも、壁に背がついてしまった。逃げられない・・・そう思った時だった。
「ダメです!」
ヴィンセントとレティシアの間に、一人の騎士が立ちはだかった。
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次回
【ウィルフレッドside】
ふふっ、あまり嫉妬してくれるなよ?
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