騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

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そのあとは【王女ミシェリア】

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「私は・・・お父様の子ではなかった・・・」


夜会の後、部屋に軟禁状態となったミシェリア。計画が失敗し、ウィルフレッドを手に入れる事ができなかった事よりも、自身が実の父親だと思っていた国王が、赤の他人であったことの衝撃が大きすぎた。いつの日からか、あまり顔も合わせなくなっていた。産まれたと同時に母親はいなかった。幽閉されているなんて知らず、乳母やメイドに世話を焼かれて育ってきた。自身が8歳になった頃から、お茶会や貴族との顔合わせなどに行く機会も増えると、護衛の騎士が増員された。その時にいた一人がウィルフレッドだった。ウィルフレッドは、優しく、実の兄達が王子教育などで構ってくれない中、いつも一緒にいてくれた。兄達より、兄らしい存在だった。好きから大好きへ、そして恋へと変わっていった。


軟禁されてからは、身支度や食事などの世話以外、この部屋を訪れる者もいなかった。常に部屋の前には見張りの騎士が立っている。幼い頃には優しかった騎士達も、いつの頃からか、よそよそしい態度と、義務的な態度へと変化していた。自身の我儘と癇癪が理由だなどと思いもしなかった。





「そんなの知らないわよ・・・誰も教えてなんてくれなかったんだから・・・」




軟禁状態になり、数日もすると、考える事も底をついた。ただただぼーっと過ごし、暗くなるのを待つだけの毎日だった。





誰も来ない・・・
私・・・忘れられてしまったの?
ねぇ、誰でもいい
誰か・・・会いにきて?
お父様・・・
お兄様・・・





結局毎日身支度は整えられるものの、部屋の外へ出ることは叶わなかった。




夜会から20日も過ぎただろうか。突然、部屋に訪問者が現れた。何も音沙汰がなかった中、急な訪問にミシェリアは恐怖を感じていた。これから自身の身に何が起こるのか・・・。もしかすると、母親と同じように幽閉されるかもしれない。どこかへ無理矢理輿入れさせられるかもしれない。いろんな事が頭を駆け巡ったが、ノックの後、許可の返事も待たず部屋の扉が開けられた。



「ミシェリア王女殿下、お久しぶりにございますね」




彼は・・・副騎士団長様・・・
何かしら
何の用事があってここに?



「本日はお届け物にあがりました」

「届け物?」

「えぇ、こちらです」



レイバンの手には、真っ赤な薔薇の大きな花束が抱えられていた。



「誰から・・・?」

「レティシア嬢に届いたものですが、受け取れないので、外に出られないミシェリア王女殿下のお部屋に飾って欲しいと」

「何・・・それ・・・貰い物を私に・・・」

「花に罪はないし、贈った側も悪気はない。だけど、自身が受け取るわけにはいかないと」

「・・・何よそれ・・・メイドに言って花瓶を持って来させて」

「承知しました」



しばらくして、メイドが持ってきた花瓶に薔薇が飾られた。最初はイライラとしていたが、次第に薔薇を見ていると自然に顔が綻んだ。だが、それも長くは続かなかった。日が過ぎるごとに、花びらが落ち、次第に弱っていき、最後には枯れてしまった。



「ねぇ」



ミシェリアは扉の外の騎士に声をかける。




「あの薔薇、どなたからレティシア嬢に贈られたものだったの?」




騎士はミシェリアの弱りきった姿に、困惑を隠せなかった。





ーーーーーーーーーーーーーー

次回

夢のほうがよかったの?




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