騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

そのあとは【公爵夫妻】

「ルド・・・」


力なく身を寄せてきたクラウディアを、夫であるアバンス公爵ディアルドは優しく、しかし、しっかりと抱きしめた。夜会で、王女ミシェリアの愚行、国王であるレオナルドの告発、王妃の罪が明らかにされた。そしてクラウディアの姉である、クリスティアの死の理由。


「ディア、先に逝ってしまった姉君も少しは憂いが晴れただろうか・・・」

「どうかしら。きっとルドがこの世にいる限り、天には行けずにとどまり続けてるはずだわ」


クラウディアは力なく笑って見せた。


「僕としては、クラウディアとの仲を邪魔なんてされたくないからね。仲良く最後まで添い遂げるところを見守っていてくれればいい。僕は・・・クラウディアだけに好かれていればいいからね」


ディアルドはクラウディアの顔を覗き込むと、うっすら涙が滲み出した目尻にキスを落とした。





クラウディアの姉であるクリスティアは、ディアルドとクラウディアの結婚式が行われるとすぐ、当時王太子であった国王レオナルドの婚約者となった。まもなく結婚式と迫った暖かな春の日。クリスティアは招かれた茶会の席で毒を盛られ、帰らぬ人となった。レオナルドの悲しみは深く、もう誰も妃など娶らぬと言い続けた。しかし、前国王である父がそれを許すはずもなく、当時1番身分の高かった元王妃、カサンドラを妃として迎える運びとなった。当時は王家を継承していく義務として自分に言い聞かせていた。初夜の日、愛や恋などなく、そこには虚しさだけが募っていた。そして、第二王子であるアルバートが産まれてからは、閨事は一切なくなっていた。レオナルドの中で義務は果たされたのだ。そして、王宮で働く侍従の中に、当時クリスティアの死の原因となった茶会が開かれた侯爵家に、従事していた者がいた。罪の告発をしたいと自ら申し出てきたのだ。毒はカサンドラが仕込んだ。給仕を行っていたメイドに罪をきせ、そしてそのメイドは口封じの為に命を奪われたと。そのメイドは己の婚約者であったと。





欲しいという己の欲だけの為に他人を犠牲にする。そんなところが親子そっくりであったとレオナルドは語った。




「きっとお姉様はまた美しく生まれ変わるわ。そして素敵な人と出会う」

「だといいな」

「次はルドを手に入れる事が叶えばいいと思うわ」

「あぁ・・・それは叶わないな」

「どうして？」

「だって僕は・・・」


そう言いかけてディアルドはクラウディアの瞳を覗き込む。


「何度生まれ変わっても、クラウディアに恋をする。どこにいてもどんな姿でも、きっと・・・君を見つけるよ」

「・・・ルド」

「愛してるよ、ディア」

「私も、愛してるわ」


公爵夫妻は、国王が辞した後の賑やかな夜会の最中、静かな庭園で愛を囁きあった。









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次回

仕方ない・・・この命が尽きるまで、君と共に生きるはずだったこの国を、良くすると誓うよ・・・