騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

文字の大きさ
上 下
183 / 544

王妃カサンドラの罪

しおりを挟む


「お前の母は・・・カサンドラだ・・・だが、お前の父は・・・私ではない」

「な、何を・・・」

「お前は不義の子だ・・・しかも当時他国の王子殿下だった・・・今は廃嫡され平民に落とされた男だ」


ミシェリアの顔から色がなくなった。自分は間違いなく王妃から産まれた実子。間違いなく王女だった。だが、今、この瞬間、目の前の国王レオナルドによって真実が語られた。


「当時王太子だった私は、父である前王から王位を継ぐことが決まっていた。戴冠式に、他国の賓客を招いた中、その男がいた。私の愛した女がカサンドラの手によって命を落としていたと知ってからは、カサンドラと子を成すことは考えることができなくなっていた。その折、カサンドラはその男と不貞を犯した。滞在している期間、何度も密会してな。だからミシェリア・・・お前は私の子では無い」

「・・・そんな」

「お前を身籠もっている事を知った私は、カサンドラに毒杯を飲ませようかと思った。だが・・・命に罪はない。お前を産んだすぐ、カサンドラを幽閉した。お前は私によって生かされたのだ。だから、このまま素直に育ってくれれば、皆から愛される王女になってくれれば・・・悪いようにはしないつもりだった。他国の王子もしくは高位貴族にでも縁組を進めるつもりだった」


レオナルドは苦虫を潰したような顔でミシェリアを睨む。


「誰が飲んでもおかしくないワインに媚薬を盛って、証拠などないと思ったか?その給仕の使用人も捉えておる。もう言い逃れはできん」

「そん・・・な・・・」


ミシェリアはその場に崩れるように座り込んだ。


「今回は未遂に終わったものの、お前は王家の信用を・・・失墜させてくれた。ミシェリアを部屋に閉じ込めておけ。見張りを立て、一歩も外に出すな」

「御意」


数人の近衛騎士達が、項垂れて力のないミシェリアを抱えフロアから出ていった。


「ロバート。未遂には終わったが、お前はこの事に加担した。危険な思考を持ち合わせておるようだな。貴族牢にて身柄を一時預かりとする。沙汰は追って出す」


青ざめたロバートも、近衛騎士によって連行されていった。


「皆のもの。この度は、娘ミシェリアのしでかした事で騒がせてしまった。今宵は私はこれにて辞する。あとは好きに楽しんでくれ」


国王レオナルドはウィルフレッドとレティシアの元に向き直る。


「この度は娘がすまなかった」


レオナルドは深くお辞儀をした。


「陛下、頭をあげてください」

「本当にすまない。レティシア嬢を早く休ませてやるといい」

「はい、そうさせて頂きます」


ウィルフレッドは自身の上着をかけたままのレティシアを横抱きにし、切なさげな表情でフロアから出ていき、そのまま馬車に乗った。






ーーーーーーーーーーーーー

次回

シア、それは俺だけにしろ!





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...