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新鮮な光景
しおりを挟むウィルフレッドとレティシアは夜会に向かうため、馬車に乗っていた。馬車の中で、レティシアを膝に乗せ、ぎゅうぎゅうと抱きしめている。そして、浮かない顔をしたままだ。そのまま王宮へと着いた。
「シア、気をつけて」
ウィルフレッドが先に馬車から降りると、レティシアの手を取りエスコートする。
「ありが・・・えっ!?」
強く引かれ、前のめりになったレティシアは、地面にそのまま落下するのを覚悟した。衝撃を覚悟し目を閉じたものの、ぶつかったのは鍛えられた胸板だった。そして、力強く抱きしめらている。
「すまない・・・」
「驚いたわ・・・どうしたの?」
「・・・こんな綺麗なシアを他の男どもに見せたくない・・・」
「そんなに嫌なのね」
「あぁ・・・」
「でも、触れていいのはウィルだけよ?」
「それはもちろんだ。他の誰にも触れさせるつもりはない」
ふっと腕の力が緩められる。
「行きたくないけど、行くか」
「そうね」
2人はゆっくりと夜会のフロアへと向かっていった。会場となっているフロアに2人が現れると、フロア中から視線が集まる。ウィルフレッドに見惚れる令嬢達、レティシアに見惚れる令息達。
「やっぱり男どもがシアを見ているな・・・」
「ご令嬢達だってウィルを見ているわよ?」
「何にも嬉しくない」
「ふふっ、私だってそうよ?」
そんな会話をしている所に、声をかけてきた者がいた。
「レティシア、久しぶりね」
「?・・・マリーリアお姉様」
「相変わらずお熱いわね」
「あら、お姉様もではなくて?」
「わ、私は、そうでもないわ」
「それは残念だな」
「へっ!?・・・ア、アルバート殿下!?」
マリーリアの背後からそっと現れた、第二王子のアルバート。イタズラが成功したかのように嬉しそうに笑っている。
「僕達だって、熱々だと思っていたんだが・・・違ったのかな?リアはいつだって頬を赤らめて愛してるって言ってくれるんだけ」
「あーーー!あーーー!」
「お姉様、はしたないですわよ?」
「いいの!もう、アル!そんな事、ここで言わないでよ!」
「よかった。リアがアルバート殿下だなんて呼ぶから、他人みたいで寂しかったよ・・・」
「きゃぁっ!?」
皆が注目する中、アルバートはマリーリアを後ろから抱き締める。たちまちマリーリアの顔は真っ赤に染まる。
「ふふっ、可愛いねリア」
ついでとばかりに、アルバートはマリーリアの頬にキスをする。マリーリアはヘナヘナと力なく俯いて、両手で顔を覆ってしまった。
「お姉様のこんな所見るの初めてだわ、なんだか新鮮」
「だろう?リアはこういうのに弱いらしい」
ニコニコと笑顔でマリーリアを抱きしめているアルバート。あの夜会で突然プロポーズをされ、婚約者となった2人。マリーリアはずっと第一王子ヴィンセントを追いかけていたが、意外とうまくいっているらしい。あの気の強い姉がいいようにされている。レティシアにとっては意外で新鮮な光景だった。
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次回
普段はアバンス団長が番犬のように側にいらっしゃるから、中々誘えないもので・・・
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