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色を纏わない理由
しおりを挟む公爵夫人とマダムマノアと色々なドレスの試着をしていた部屋から、ウィルフレッドはレティシアを試着のドレスのまま連れ出した。ウィルフレッドが部屋に訪れた時、たまたま青いドレスの試着の後だった。それを目にし、耐えきれず連れ出したのだ。自室に連れ込むと、ソファに横抱きにして座る。
「シア、似合っているぞ」
「ふふっ、ありがとう」
「このドレスは買い取る。他にも用意してもらわないとな」
「他にも?」
「あぁ、毎日シアには俺の色を纏って欲しい」
「えぇ?毎日?」
「あぁ、毎日だ」
「それじゃ困るわ」
「どうしてだ?」
「だって飽きるじゃないの」
口を尖らせて拗ねるような態度を見せるレティシア。その仕草をみて、ウィルフレッドはちゅっと軽くキスをする。
「そうか・・・残念だ」
「残念?ウィルが飽きるのが残念なの?」
「俺が?」
「だって、毎日同じ色のドレスばかり着ていたら、ウィルだって飽きるでしょう?だから着ないの。ウィルの色を纏うのは夜会やお茶会などの特別な時だけよ?」
「俺が飽きる・・・そんな事あるわけないだろう。シアが毎日俺の色を纏っている事に何故飽きるんだ。シアの事はどれだけ見ていても飽きないのに。どんな格好をしていようが、シアはシアだし、可愛さも美しさもそのままだ。だが、俺の色を纏ったシアは・・・特別に可愛いし、綺麗だ」
「だから、外に行く時だけなのよ」
「?」
「私はウィルのものよって言っているみたいでしょう?」
「っ!?」
ウィルはみるみるうちに表情が緩んでいく。まさかレティシアまで、ウィルフレッド自身に独占欲を露わにされることを考えているなんて。レティシアの事をぎゅうぎゅうに抱きしめてレティシアの肩に頭を乗せる。
「ウィル、苦しいわ」
「あぁ、すまん・・・嬉しすぎて。シアにそんな事言われるなんて思ってもみなかった」
「私はそんな事考えてないと思ってた?」
「だったらいいなとは思ってた。これまで俺の独りよがりだと思っていたから」
「私だって、ウィルのこと好きなの。だから、私のよって言いたいし、見せつけたい気持ちはあるわ。そうしないと、ウィルは人気だものね?他のご令嬢が今でも狙っているんだもの。それも王女様が・・・」
レティシアの言葉を聞いてウィルフレッドが顔を上げる。
「誰がどう俺を想っていようが知ったことではない。俺にはシアしかいない。シアじゃなきゃ意味がない」
しっかりとレティシアを見据えて話すウィルフレッドの瞳には、嘘や偽りなどない。疑う余地もないのだ。レティシアは、ウィルフレッドとの未来を誰にも邪魔させない。そう心に誓った。そして、これから起こるであろう事に強い意志を持って抗う事を決めた。
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次回
あんな女、王女であろうが公爵家にはいらないとおっしゃるんですもの
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