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ウィルフレッドの苦手なもの
しおりを挟む「ウィル、あーん」
「あーん」
食欲があまりないと言いながらも、レティシアに食べさせてもらう事でウィルフレッドは食がしっかりと進んでいた。食事ができている事に一先ず安堵する。
「はい、薬も飲んで」
「・・・うっ・・・」
「何?苦いから飲まないなんて言わないわよね?」
「く、薬なんか飲まなくったって、寝ていれば良くなる」
「そう・・・ウィルは薬飲めなんて言わない優しい婚約者がよかったのかしら・・・今からでも遅くないわ、取り替える?」
「えっ!?ダ、ダメだ!ここにいてくれ!シアじゃないとダメだ・・・」
「じゃあ、薬、飲むわよね?」
「・・・わ、わかった、飲む」
「はい、どうぞ」
「・・・」
薬を手渡され、苦々しい表情でじっと見つめるウィルフレッド。時が止まったかのように固まったまま動かない。
「飲まないの?」
「の、飲む!飲む・・・うん、飲める。飲める!」
必死に自身に言い聞かせるように、手にしていた薬を口に放り込んだ。
「んっ・・・んん・・・」
ウィルフレッドは、口をへの字に曲げ、目に涙を溜めながら耐えていた。
「ふふっ、意外だったわ。ウィルにも苦手なものがあるのね?」
「・・・人間、一つや二つ、苦手はあるさ・・・。俺は、香水を振り撒いて擦り寄ってくる女と・・・苦い薬は嫌いだ」
「そうなのね。薬は頑張れば飲める事がわかったわ。じゃあ、女性も頑張れば耐えれると言う事かしら?」
レティシアは明後日の方向を見ながら考え事をするようにポツリとこぼす。途端、ぐいっと引き寄せられ、気付けばウィルフレッドに抱きすくめられていた。
「薬はいい。女な無理だ。我慢する必要もない。必要もないのに、何故耐えなければならないんだ・・・俺にはシアがいる。シアだけでいい。他の女はいらない」
ウィルフレッドは、レティシアの首に擦り寄り、ぼそぼそと話す。耳元で静かに聞こえる声に、本当に他の女性はいらないと言っているのがよくわかる。これ以上を言うのもなんだか可哀想に思えてきた。他の男がレティシアを、他の女がウィルフレッドをという話になるたび、ウィルフレッドは焦り、必死になり訴えてくる。そんなウィルフレッドが愛おしいと思えていた。
「私もよ、ウィル以外いらないわ」
「・・・シア、大好きだ」
「えぇ、私も大好きよ」
ウィルフレッドは安堵の息を漏らす。
「えっ!?ちょ、ちょっと!?」
ぽすん・・・抱きしめられた体勢のまま、寝台へと倒された。
「食べたせいか・・・なんだか眠くなってきた。早く、治したい・・・一緒にいたい・・・だから、一緒に・・・寝る・・・一緒に・・・すぅ・・・すぅ・・・」
「ふふっ、寝ちゃったわ」
規則正しい寝息が聞こえる。ウィルフレッドの寝顔を見ながら、レティシアも一緒にお昼寝タイムとなったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
何やってるんだ!?
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