上 下
146 / 543

この世の終わり

しおりを挟む


事件から一カ月が経った。怪我もだいぶ良くなり、ウィルフレッドは騎士団長としての職務に復帰する事になったのだが。


「・・・この世の終わりが来た・・・」

「ウィル、何言ってるのよ」


ウィルフレッドは屋敷の入り口で、絶望の表情で俯いている。


「だって、何時間もシアと離れてないといけないなんて!」

「毎日屋敷には戻ってくるでしょう?ちゃんと待ってるわ」

「わかってる、わかってるんだが・・・だが、この一カ月、毎日シアと一緒にいた・・・幸せだったから」

「これからも毎日一緒にいるわ」

「触れたいと思えばいつでも触れられた、抱きしめられた」

「帰ってきたら抱きしめてあげるから」

「もう一回怪我したい・・・シアに看病されていたい・・・」

「・・・もう」

「シアは平気なのか?俺は嫌だ・・・一緒にいたい、離れたくない!」


ウィルフレッドはレティシアを強く抱きすくめる。肩に頭を押し付け嫌だ嫌だと甘えていた。


「・・・ウィル・・・じゃあ、お昼までなら頑張れるかしら?」


レティシアの投げかけに、おずおずと顔を上げる。


「昼?昼まで耐えたら帰ってきていいのか?」

「そうじゃないわ」

「?」

「また、差し入れ持って行くわ。それまで頑張れるかしら?」


レティシアは覗き込んできていたウィルフレッドの頬を両手で包む。


「膝枕!!」

「えぇ?それ以上の事してるのに・・・そんなに膝枕が嬉しいの?」

「あぁ、シアに触れていると安心する。それに、俺の枕になっていれば動けないだろう?シアを独り占めできるしな」

「ふふっ、そういう事ね。わかったわ。行ってらっしゃいのキスは?」

「・・・する」


ウィルフレッドは、ついばむようなキスを何度も何度もする。離れ難いと言わんばかりに。


「約束だぞ?絶対だからな?お昼までは一人でも耐える」

「わかったわ、必ず行くわ」


ウィルフレッドは、とてつもなく離れたくない様子で、不安そうに、泣きそうな顔で、何度も何度も振り返る。2、3歩進んでは振り返り、何度も何度も振り返っては手を振って出かけて行った。




---------------

次回

あの時計壊れてるんじゃないか?






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

離宮に隠されるお妃様

agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか? 侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。 「何故呼ばれたか・・・わかるな?」 「何故・・・理由は存じませんが」 「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」 ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。 『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』 愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。

悪役令嬢に転生してヒロインを溺愛している王子に殺されそうになったが一番の推しの近衛騎士に助けられて結婚しました

夜炎伯空
恋愛
「ぎゃーーーーーー!! 殺さないでーーーーーー!!」 「あれだけのことをしておいて、今更、命乞いだと!! 彼女にしたことは死をもって|償(つぐな)ってもらうからな!!」 「それは私だけど、私じゃないんですーーーーーーーー!!!」  乙女ゲームの悪役令嬢カリアに転生した直後、私はヒロインを愛する王子に殺されそうになっていた―― 「ラムド、一生のお願い!! 私を助けて!!」  私はそう言って深々と頭を下げた。 「カリア様でも頭を下げることがあるんですね……。わかりました、何とかしてみせます」  悪役令嬢カリアの滅多に見せない行動に、ラムドは驚きながらそう答えた――

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...