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この世の終わり
しおりを挟む事件から一カ月が経った。怪我もだいぶ良くなり、ウィルフレッドは騎士団長としての職務に復帰する事になったのだが。
「・・・この世の終わりが来た・・・」
「ウィル、何言ってるのよ」
ウィルフレッドは屋敷の入り口で、絶望の表情で俯いている。
「だって、何時間もシアと離れてないといけないなんて!」
「毎日屋敷には戻ってくるでしょう?ちゃんと待ってるわ」
「わかってる、わかってるんだが・・・だが、この一カ月、毎日シアと一緒にいた・・・幸せだったから」
「これからも毎日一緒にいるわ」
「触れたいと思えばいつでも触れられた、抱きしめられた」
「帰ってきたら抱きしめてあげるから」
「もう一回怪我したい・・・シアに看病されていたい・・・」
「・・・もう」
「シアは平気なのか?俺は嫌だ・・・一緒にいたい、離れたくない!」
ウィルフレッドはレティシアを強く抱きすくめる。肩に頭を押し付け嫌だ嫌だと甘えていた。
「・・・ウィル・・・じゃあ、お昼までなら頑張れるかしら?」
レティシアの投げかけに、おずおずと顔を上げる。
「昼?昼まで耐えたら帰ってきていいのか?」
「そうじゃないわ」
「?」
「また、差し入れ持って行くわ。それまで頑張れるかしら?」
レティシアは覗き込んできていたウィルフレッドの頬を両手で包む。
「膝枕!!」
「えぇ?それ以上の事してるのに・・・そんなに膝枕が嬉しいの?」
「あぁ、シアに触れていると安心する。それに、俺の枕になっていれば動けないだろう?シアを独り占めできるしな」
「ふふっ、そういう事ね。わかったわ。行ってらっしゃいのキスは?」
「・・・する」
ウィルフレッドは、ついばむようなキスを何度も何度もする。離れ難いと言わんばかりに。
「約束だぞ?絶対だからな?お昼までは一人でも耐える」
「わかったわ、必ず行くわ」
ウィルフレッドは、とてつもなく離れたくない様子で、不安そうに、泣きそうな顔で、何度も何度も振り返る。2、3歩進んでは振り返り、何度も何度も振り返っては手を振って出かけて行った。
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次回
あの時計壊れてるんじゃないか?
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