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レティシアの危機に
しおりを挟むウィルフレッドから贈られた指輪を眺めていたレティシアの視界に影が近付いてきた。その影は目の前で止まり、ウィルフレッドが戻ってきたのかと思い顔を上げる。
「想い人ではなくてごめんなさいね。あなたには申し訳ないけれど・・・私の未来の為よ」
目の前に立つ女性がそう言うと、後ろから数人の男達があらわれ、レティシアは羽交締めにされてしまった。
「な、何するの・・・離して!」
必死に抵抗するも、びくともしない。男達は女の指示で、路地へとレティシアをひきずり込んでいく。何をされるのか、何が起きようとしているのか、頭の中でいろんな事が駆け巡る。このままどこかへ連れ去られれば助からないかもしれない。必死にもがくも逃れる事もできず、レティシアは最悪の事態を覚悟した。
「おい・・・俺の嫁に何してる」
地を這うような声がした。顔を上げると、そこには、殺気を漂わせて睨みつけているウィルフレッドがいた。いつの間にか声をかけてきた女はいなくなっていた。レティシアは安堵の息を漏らす。ウィルフレッドの殺気にひるんで、レティシアを掴んでいた男達の手が緩んだ一瞬を見逃さず間合いを詰め、殴りかかり一気に仕留めた。地面に倒れる男達を確認し、レティシアの無事を確認しようと振り返ろうとした瞬間、反射して光るものが視界の隅に入る。咄嗟に駆け出し、レティシアをしっかりと抱き込んだ。
「うぐっ!・・・うっ・・・」
「ウィル?」
苦しげな声をあげ、顔を歪ませるウィルフレッド。次第に抱きしめていた腕の力が弱まっていき、崩れるように地面に倒れ込む、額に汗を滲ませ呼吸は荒く、ウィルフレッドの背中からは真っ赤な鮮血が流れ落ちていた。
「ウィル!!しっかりして!ウィル!!」
「・・・違うっ・・・違うの!!」
「・・・何が違うと言うのです!!」
「違うのよっ!団長様ではなくて・・・あなたを!・・・いやっ、いやぁぁぁぁ!」
騒ぎを聞きつけ、王都の警備で配置されている市井の警備騎士達が、雪崩れるように駆け寄ってきた。
「アバンス団長!?何故こんなことに」
「・・・彼女に・・・ランドルスト公爵令嬢様に刺されて・・・ウィル・・・しっかりして!ウィル!!」
ウィルフレッドをしっかりと抱きしめ、悲痛の表情を浮かべるレティシア。ナイフを持ち、襲ってきた女は、ランドルスト公爵の令嬢であるイザベラだった。
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次回
また好きって言って・・・
愛してるって言ってよ・・・
・・・また抱きしめてよ・・・
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