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脳裏に浮かんだのは
しおりを挟むウィルフレッドは焦っていた。他の男とお楽しみなどと言われては、レティシアの身に危険が及んでいるという事だ。一体誰が・・・。そう考えたウィルフレッドの脳裏に、先日の侯爵家での茶会の光景がよぎった。
「あいつか・・・くそっ!」
ウィルフレッドは、来た道を引き返し、たどり着いたフロアで周囲を見渡し目的の人物を見つけた。
「オルベル侯爵令息!話がある」
「・・・何です、そんな形相で・・・えらく慌てておいでですね?」
第一王子ヴィンセントの側に控えていたオリバーにウィルフレッドが詰め寄った。
「どうしたんだ、ウィルフレッド?」
「・・・殿下・・・オルベル侯爵令息、ランドルスト公爵令息はどこだ?なぜ殿下の側に控えていない?」
「・・・あぁ、今は一旦離れているだけで」
「嘘を言うな」
「なぜ嘘だと?」
「では、殿下の前で確認するが、いいんだな?」
「・・・何をです」
「シアはどこだ?ランドルスト公爵令息が一緒なのではないか?一体何をするつもりだ」
会話の内容に不穏な空気を覚え、会場中が静まりかえった。
「オリバー、何か知っているのか?なぜ動揺している。レティシア嬢に何をした!!」
ヴィンセントが激昂して声を上げる。
「・・・い、いえ、私は何も・・・」
「そうか、オリバーは私に忠誠を誓ってくれていると思っていたのだがな・・・残念だ」
「で、殿下・・・」
「もう、いい・・・ウィルフレッド、探すぞ!おい、フロアにいる近衛!警備の人数を残し総動員しろ!マクシミリオンとレティシア嬢を見つけたら報告しろ!」
「「「御意!!」」」
ウィルフレッドは驚いていた。フラれた相手であるレティシアの事を、真剣に心配しているヴィンセントがいる。恋慕の情は抱いていたが、この人は一国の王子であるのだという部分が垣間見えた。
「殿下・・・」
「ウィルフレッド、私はレティシア嬢に選ばれなかった。だが、それとこれとは別だ。危険が及んでいるのがわかっていて黙って見ているわけにはいかないからな。まぁ、先に見つけて格好をつけさせて貰うぞ?私に惚れ直すかもな」
ニヤリと笑うヴィンセントは歩き出し、ウィルフレッドは静かにその後に続く。
「殿下!」
「あぁ・・・オリバー、沙汰は追って連絡する。侯爵家で大人しく待っていろ」
オリバーは去っていくヴィンセントとウィルフレッドの背中を呆然と見つめ、静かに膝をついて項垂れた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
そうか・・・この唇に触れていいのは・・・俺だけだ
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