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レティシアの危機に
しおりを挟むミシェリアに謀られ、マクシミリオンと密室に二人にされたレティシア。断っても尚、触れてこようとするマクシミリオン。距離をとろうとするも、マクシミリオンがじわりじわりと距離を詰めてくる。
「ランドルスト公爵令息様、先程も申し上げましたが、私には婚約者がおります。近寄られるのも触れられるのも困るのですが」
「君もつれないなぁ・・・しかし、その態度・・・さらにそそる。まさか、わかっていてわざとやっているのか?」
「・・・お話になりませんわね」
「なぁ、レティシア嬢、アバンス団長なんかやめて、私の妻にならないかい?私は君を気に入ったよ。きっと幸せにしてみせるさ、どうだい?」
「無理ですわ。それに、そんなに簡単に男を乗り換える女を信用できまして?」
「先の夜会での君の言動。殿下にあれだけ恋慕を抱かれているのにもかかわらず、殿下を選ばなかった。こんなにはっきりと意思表示されるなど・・・愛される男が羨ましいよ。だからね、欲しくなったんだ・・・君が。他の女なら信用などできないだろうが、君ならできる。他ならぬレティシア嬢が私を選ぶと言うのなら、信じない理由があるかな?」
「評価していただけるのは光栄ですが・・・お気持ちにはお答えできませんわ」
マクシミリオンは、ニヤリと笑みを浮かべ、さらに距離を縮めレティシアの頬に手でさらりと触れる。
「・・・どうしたら手に入るのかな・・・私は君が欲しくて欲しくてたまらないんだ・・・何でも簡単に手に入れられるのに、君は簡単には手に入らないみたいだね。まぁ、それでも、私も公爵家の人間だ。相手はアバンス公爵家。負けない自信はあるよ?そうだな・・・無理矢理私のものにしてもいいんだよ?」
マクシミリオンは不敵な笑みを浮かべ、レティシアの瞳を覗き込んでいた。
その頃、夜会会場のフロアでは、ウィルフレッドが、レティシアが戻ってくるのを今か今かと待っていた。ウィルフレッドが騎士団長としてではなく、一人の公爵令息として夜会に参加するのは珍しく、この機会を逃すまいと令嬢達が集まり出した。
「アバンス団長様、お一人ですの?私と一曲踊って頂けませんこと?」
「悪いが、私は婚約者以外と踊るつもりはない」
「アバンス団長様、よければ庭に散策に行きませんこと?薔薇がキレイに咲いていまして」
「すまないが、他をあたってくれ」
レティシアが離れた事に、今だとばかりに令嬢達がウィルフレッドの元に詰め寄っている。何人もの令嬢に囲まれていたが、ふと人が避け道ができているのに気付く。そこには、ここにいるはずのない人物がいた。
「アバンス団長」
「・・・王女殿下・・・シアは一緒ではないのですか?」
ウィルフレッドの眉間には皺がより、鋭い目つきでミシェリアを睨む。
「アバンス団長・・・睨むのはよしてくれる?曲がりなりにも私は王族よ?間違ってもそんな目を向けていい相手ではないわ」
「・・・失礼しました。しかし、質問にはお答えください。シアはどこです?」
「そんなにあの女が気になりまして?あんな女やめたらよろしいのに。今頃、他の男性とお楽しみの最中よ?」
「・・・失礼します!!」
「待ちなさい!」
ミシェリアの大声に会場がしんと静まりかえる。
「やみくもに探すつもりなの?ふっ・・・もう手遅れよ」
「・・・私の手で見つけて取り戻して見せます」
「他の男の手にかかった女など放っておいて、私と時間を過ごしましょうよ?」
ミシェリアは、甘えるような声を出してウィルフレッドに手を伸ばす。ウィルフレッドはその手をかわし後ずさった。
「ご遠慮します。失礼します」
ウィルフレッドは踵を返し、勢いよく駆けて行った。
「本当に気に入らない・・・なぜあの女なのよ・・・私より目立って・・・しかもアバンス団長まで・・・悔しい・・・私のウィルフレッド・・・私のものだったのに」
ミシェリアは周りに聞こえない声量でぼそぼそと話す。
「ふっ、でも。他の男の手にかかった女など、さすがのアバンス団長もこれまで通り愛するなどできないでしょう?私みたいに清らかなままの身でいないとね・・・ふふっ、マクシミリオン・・・うまくやってよね?楽しみ」
誰もが見惚れるような微笑みを浮かべ、ミシェリアはホールを出て行った。
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次回
先に見つけて格好をつけさせて貰うぞ?
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