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婚約者としての夜会

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ウィルフレッドにエスコートされ、会場入りしたレティシア。前回の夜会で公に恋仲と周知の事実となった二人は、もちろん注目の的である。青いドレスを着こなしてフロアを進むレティシアは、数多の令息を虜にしていた。


「シア・・・」

「何?」

「・・・男達がシアに見入っている・・・」


レティシアを抱き寄せるウィルフレッドの腕に力が入る。


「そう?でも、私はウィルしか見てないわよ?」

「・・・シア・・・今それを言われても、思う存分甘やかす事ができないじゃないか・・・帰ったら覚えておけよ?」

「ふふっ、何があるのかしらね?楽しみだわ」


そんなやり取りをしながら微笑み合う二人は、フロア中の視線を集めた。二人は会話を楽しんでいた為、そこに近付く人物がいる事に気が付いてはいなかった。周りは何が始まるのかと神妙な面持ちで見つめていた。


「アバンス団長、レティシア様、ごきげんよう」

「王女殿下」

「ミシェリア王女殿下、先日のお茶会では先に辞してしまい、申し訳ありませんでした」

「いいえ、いいの・・・またご一緒できたら嬉しいわ」

「是非に」

「アバンス団長、少しレティシア様をお借りしてもよろしくて?」

「えっ?・・・しかし・・・」


ウィルフレッドは心配な顔をしてレティシアを見つめる。


「ウィル、大丈夫よ。女性同士の話があるだけよ」

「・・・わかった」


レティシアはミシェリアに促され、フロアを出て行った。その背中をウィルフレッドは心配そうに眺めていた。ミシェリアに従いついて行き、辿り着いたのは誰もいない部屋。


「レティシア様、こちらで待っていてくれる?メイドにお茶を頼んですぐ戻るわ」

「はい、承知しました」


ミシェリアは部屋を出て行った。しばらくすると、ノックをする音がし扉が開いた。ミシェリアが戻っててきたのかと姿勢を正すと、入ってきたのは別の人物だった。


「・・・やはり美しいな・・・初めましてかな、レティシア嬢」

「・・・えぇ、初めましてですわね・・・お名前を伺っても?」

「あぁ、これは失礼した。私は、マクシミリオン・ランドルストだ」


部屋に現れたのは、ミシェリアではなく、ランドルスト公爵家子息であるマクシミリオンだった。


「君とお近づきになりたくてね」


そう言うと、マクシミリオンはレティシアに近づき髪を一束すくうとキスを落とした。


「ランドルスト公爵令息様・・・困りますわ。私には婚約者がいますの」

「ふっ、あくまで婚約者だろう?夫婦ではないんだ、いくらでも奪い取れるさ」


ニヤリと笑うマクシミリオンに、レティシアは背筋がゾッとする感覚を覚えた。






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次回

睨むのはよしてくれる?

曲がりなりにも私は王族よ?

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