113 / 544
【イザベラside】全ては手に入れる為に
しおりを挟む 小指を絡める約束方法など知るはずもなく、ローズは停止する。だが、冨岡が口にした『大人と子どもではなく』という言葉は彼女の心を確実に揺らしていた。
「子ども扱いしないってほんと?」
ローズに問いかけられた冨岡は優しく頷く。
「約束に大人も子どももありませんよ。俺とローズお嬢様の約束です」
「じゃあ、私に押し付けるようなことしない?」
その時ローズが言葉にしたのは素直な気持ちなのだと、冨岡は気づいた。年齢に相応しい話し方と甘えたような声色。それが演技であればすぐさま女優になれるだろう。全米が涙することも、権威ある女優賞を受賞することも間違いない。
その言葉から察するに、これまで様々な大人に『理想のお嬢様』を押し付けられてきたことは間違いない。
彼女には彼女なりの理由がありそうしているのだ、と薄々気づいている冨岡はローズの右手に小指を近づけた。
「押し付けるようなことはしないと約束しますよ。ほら、ローズお嬢様も小指を出してください」
「小指・・・・・・これは一体なんなの?」
「あ、そっか。これは俺の国で約束を交わす時にする、儀式のようなものです」
「儀式?」
「そうですよ、小指で固い約束を交わすんです。これは重い重い儀式ですから、約束を破ると針を千本飲まなければなりません」
冨岡がそう説明するとローズは左手で右手の小指を握って隠す。
「そんなことしたら死んじゃうじゃない!」
「ええ、命がけの約束です」
想像していたよりも彼女が大きく反応したことで、思わずにやけそうになるのを我慢する冨岡。決して馬鹿にしているわけではなく、ローズを子どもらしく可愛いと思ってしまったのだ。
そんなローズは少し怯えた表情で言葉を返す。
「野蛮過ぎないかしら、あなたの国」
「それほど約束を大切にする国なんです。そんな国から来たこんな俺との約束なら安心でしょう? 俺はお嬢様に何かを押し付けるようなことはしません。だから、俺にお嬢様と話す時間をください。約束です」
再び冨岡はローズとの指切りを試みる。
ここまで驚いてばかりのローズだったが、幼いなりに冨岡がまっすぐ自分と向き合ってくれていると気づき小指を絡めた。
「約束を破ったら本当に針を千本飲むのね?」
慎重に確認を怠らないローズ。考えるまでもなく、冨岡は頷いた。彼の根底には『ホース公爵の後ろ盾を得るため』という目的はあったが、今は『ローズの話を聞きたい』と心から思っている。『困っている人がいれば助けられる人間であってくれ』という源次郎の言葉が冨岡の行動に大きく影響していた。
「もちろんですよ」
「私は公爵家の娘よ? 針を用意することなんて簡単なんだから」
「約束は互いにですから、ローズお嬢様が飲むことになるかもしれませんよ?」
「子ども扱いしないってほんと?」
ローズに問いかけられた冨岡は優しく頷く。
「約束に大人も子どももありませんよ。俺とローズお嬢様の約束です」
「じゃあ、私に押し付けるようなことしない?」
その時ローズが言葉にしたのは素直な気持ちなのだと、冨岡は気づいた。年齢に相応しい話し方と甘えたような声色。それが演技であればすぐさま女優になれるだろう。全米が涙することも、権威ある女優賞を受賞することも間違いない。
その言葉から察するに、これまで様々な大人に『理想のお嬢様』を押し付けられてきたことは間違いない。
彼女には彼女なりの理由がありそうしているのだ、と薄々気づいている冨岡はローズの右手に小指を近づけた。
「押し付けるようなことはしないと約束しますよ。ほら、ローズお嬢様も小指を出してください」
「小指・・・・・・これは一体なんなの?」
「あ、そっか。これは俺の国で約束を交わす時にする、儀式のようなものです」
「儀式?」
「そうですよ、小指で固い約束を交わすんです。これは重い重い儀式ですから、約束を破ると針を千本飲まなければなりません」
冨岡がそう説明するとローズは左手で右手の小指を握って隠す。
「そんなことしたら死んじゃうじゃない!」
「ええ、命がけの約束です」
想像していたよりも彼女が大きく反応したことで、思わずにやけそうになるのを我慢する冨岡。決して馬鹿にしているわけではなく、ローズを子どもらしく可愛いと思ってしまったのだ。
そんなローズは少し怯えた表情で言葉を返す。
「野蛮過ぎないかしら、あなたの国」
「それほど約束を大切にする国なんです。そんな国から来たこんな俺との約束なら安心でしょう? 俺はお嬢様に何かを押し付けるようなことはしません。だから、俺にお嬢様と話す時間をください。約束です」
再び冨岡はローズとの指切りを試みる。
ここまで驚いてばかりのローズだったが、幼いなりに冨岡がまっすぐ自分と向き合ってくれていると気づき小指を絡めた。
「約束を破ったら本当に針を千本飲むのね?」
慎重に確認を怠らないローズ。考えるまでもなく、冨岡は頷いた。彼の根底には『ホース公爵の後ろ盾を得るため』という目的はあったが、今は『ローズの話を聞きたい』と心から思っている。『困っている人がいれば助けられる人間であってくれ』という源次郎の言葉が冨岡の行動に大きく影響していた。
「もちろんですよ」
「私は公爵家の娘よ? 針を用意することなんて簡単なんだから」
「約束は互いにですから、ローズお嬢様が飲むことになるかもしれませんよ?」
1
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。


はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!?
本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる