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【イザベラside】全ては手に入れる為に
しおりを挟む「誰なんだ!」
この国の第一王子であるヴィンセント殿下の荒げた声がフロアに響き渡った
先程からずっと一人のご令嬢を追いかけていらっしゃる様子は気のせいではなかったのね
「・・・そんなに知りたければ教えて差し上げますわ」
「彼を夫にすると決めましたの」
「私の未来の夫を紹介しますわ。ウィルフレッド・アバンス騎士団長様ですわ」
あのヴィンセント殿下に望まれながら、他の男を選ぶとは・・・
殿下はとてもお優しい方
王家唯一の王女であるミシェリア様と姉妹のように育ってきた私
もちろん、ヴィンセント様、第二王子のアルバート様も同じ
その中でも、いつの頃からか、ヴィンセント殿下には、お兄様として慕っている気持ち以上に、恋心を抱いていた
殿下から望まれるなど、私からしてみれば夢のような事なのに
私だったら必ずその手をとるわ
陛下が待っておれと言ったであろう・・・とおっしゃった
もしかすると、陛下はベルモンド辺境伯令嬢との縁談を進めようとされていたのかもしれない
ヴィンセント殿下が突っ走ってしまったという事だったみたい
悔しい・・・どうしてヴィンセント殿下のお気持ちは私に向かないの?
その後の事は物語でも見ているみたいにみんな見入っていたわ
アバンス公爵令息様・・・・騎士団長でもあられるウィルフレッド様が、あんなに大泣きしながら女性に抱きつく姿なんて、誰が想像できたかしら
その後の殿下は憑き物がとれたかのように静かだった
心配になる・・・
でも、よく考えれてみれば、殿下に決まった相手ができたわけではない
頑張れば、まだ隣に立てる可能性があるという事
それから数日後の事、互いにお茶会に誘い合うご令嬢の屋敷に来ていた
宰相の娘でもある、侯爵令嬢のミリア嬢
あのベンルモンド辺境伯令嬢とは学友だと聞いた
今回のお茶会には、彼女も招待したらしい
「ミシェリア様、今度のお茶会に例のベルモンド辺境伯令嬢が参加するらしいですわ」
「・・・そう・・・話題の人を誘って根掘り葉掘り聞きたいということかしらね・・・全く下世話ね」
「ミリア嬢とベルモンド辺境伯令嬢は学友なのだそうですわ。昔のよしみという事なのでしょう」
「・・・イザベラ、私もそのお茶会参加するわ」
「・・・わかりました、そのようにミリア嬢にお伝えしておきますわ」
こと時は、まだ何も気付いていなかった
このお茶会に興味を持ったのが、私達だけではなかったこと
お茶会ではもっぱら夜会で起きた事ばかりに話の花が咲いた
・・・あれは・・・お兄様?・・・とオリバー様?
ここは侯爵邸・・・
オリバー様はともかく、なぜお兄様までいらっしゃるの?
・・・もしかして、ベルモンド辺境伯令嬢を見にでもきたのかしら・・・
お茶会では、ミシェリア様は終始機嫌が悪いのが手に取るようにわかった
長年一緒にいた私だけかしらね
「ねぇ、イザベラ・・・私、許せない」
「・・・お気持ちは察しておりますわ。ミシェリア様を差し置いて話題の中心になるなど」
「違うのよ」
「違う・・・とは?」
「アバンス団長よ・・・彼は・・・ウィルフレッド様は、私のものなのに」
ミシェリア様は、王女であるが故に、幼い頃から護衛がついていた
その中でも近衛騎士は常に王族の護衛にあたる
アバンス騎士団長様は、団長になる前は、ミシェリア様の護衛によくついていたそう
騎士団長になってからは、陛下に気に入られ、いつも側におかれるようになった
ミシェリア様はずっと想いを寄せられていたのね・・・
「彼女・・・どうにかできないかしら?」
「どうにかとは?」
「たとえば・・・この縁談を壊すような・・・そうね、純潔を奪う・・・とか」
「ミシェリア様・・・」
「ねぇ、イザベラ?」
「はい」
「ヴィンセントお兄様をお慕いしているのでしょう?」
「・・・」
「あの女とアバンス団長が結婚できないような瑕疵を作ることができれば、お父様にお願いしてあげるわ。お兄様には、公爵令嬢であるイザベラがもっともいい相手だって。幼い頃からずっと一緒に育ってきたのよ?愛はなくとも、情はあるわ。そのあとは、媚薬でもなんでも盛って関係を持てば、娶るしかなくなる。そうよ・・・あの時にみたいにね?」
ゴクリ。
生唾を飲み込んだ
ミシェリア様は可愛く微笑んでいらっしゃるけれど、目は本気だった
やれという事
そして、私は決めた・・・
全ては手に入れる為
本物の愛は手に入れられなくても、あなたから熱の篭った目で見てもらえなくても・・・それでもあなたを愛しているから・・・
「承知・・・しました」
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次回
シアの帰る家はここ
帰る場所は俺の腕の中だ
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