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惚気と自慢
しおりを挟むウィルフレッドの嫉妬三昧の執務も無事に終わり、屋敷に帰ることとなった。
「ウィル、歩けないわけじゃないのよ。降ろしてくれる?」
「いーやーだー」
「もう・・・」
子どもの駄々をこねているような態度をとるウィルフレッド。レティシアを離そうとしないせいで、抱えられたまま王宮内を進んでいた。すると、前から現れた一人の男が声をかけてきた。
「・・・おい・・・」
「はい?」
「見せつけてくれるなよ」
「では、見なければよろしいのです」
「なっ!?」
王宮の通路で第一王子ヴィンセントと出くわしたのだ。
「あら、ヴィンセント殿下、数日ぶりですわね」
「あぁ、そうだな・・・まだ三日と経っていないからな」
「ふふっ」
「他の男に笑いかけるなと言っただろう?殿下を虜にしてどうする・・・」
「じゃあ、早く帰りましょう?おかえりなさいのキスするんでしょう?」
「・・・おい、なんだそれ?・・・一緒に帰るのではないのか?何故おかえりなさいのキスになるのだ!」
「おかえりなさいだけではないですよ?おはようもおやすみもいってらっしゃいも、そしてしたくなったらするんです。今も・・・」
「んっ・・・もう・・・」
「くそっ・・・ん・・・んん?ちょっと待て・・・おはよう、おやすみってどう言う事だ!」
「えっ?そのままの意味ですよ?」
「待て、待て!まさか・・・一緒に住んでるとは言わないよな!?」
「そうですよ?あぁ・・・一緒に寝てますしね」
ウィルフレッドは自慢げなしたり顔でヴィンセントを見やる。
「はぁっ!?何だと!?一緒に・・・寝て・・・る?・・・待て!お前達は、まだ夫婦でもないじゃないか!それに、再会したのは数日前だと言ったじゃないか!おかしい!おかしいぞ!」
「殿下、そんなに暴れないでください。夫婦ではないかもしれませんが、いずれシアは公爵家に入り、私たちは夫婦になるんです。早いか遅いかの違いですよ」
「まぁ、ウィルに・・・公爵家の皆様になし崩しにされただけですけどね」
「ぐぅぅ・・・しかもなんだ・・・もう、愛称で呼び合っているというのか!?」
「えぇ、夜会の翌日にそう決めたんです。私だけが呼んでいい呼び名です。なぁ、シア?」
「ふふっ、ウィルは案外意地悪なのね?」
「きぃぃっ!!」
「殿下も早く愛しい婚約者を見つけてくださいね。素晴らしいですよ?毎朝起きたら目の前に愛しい存在がいるんです。特にシアの寝顔と目覚めは天使かと見紛うくらい可愛いんです。目覚めの瞬間、目の前にシアがいて、自分の腕の中で眠っているんです。朝から愛しさで包まれるなんて、幸せのなにものでもありませんよ。頑張ったら頭撫でて貰えて、お昼はあーんもして貰って、膝枕もして貰いました。怖い夢を見て飛び起きたんですが、大丈夫よって抱きしめてくれるんです。他の男に囲まれているシアを見たときは血の気が引きました。でも、抱きしめてなだめてくれて・・・大泣きするような格好悪い私でも好きだって、大好きだって言ってくれるんです。わがままをたくさん聞いてくれて・・・それに、私は案外嫉妬深いようです。周りの目のあるところで抱き合っている男女なんて、頭がおかしいのかと思っていましたが、知らなかった自分が愚かだったと知りました。知ってしまったんです、周りの目など気にせず相手を求めてしまうものなのですね。この歳になって初めて知りました。愛しい人を目の前にすると・・・シア以外見えなくなるのです。ヴィンセント殿下・・・私は・・・とても幸せです」
「う、うるさぁぁぁい!!早く帰れ!!」
「えぇ、言われなくとも帰りますよ」
ウィルフレッドはレティシアを見て、にこっと笑いかける。
「シア、今日の夕食、また、あーんってしてくれるか?」
「いいけど?」
「寝るときは抱きしめさせてくれよ?」
「いいわよ」
「湯あみも一緒に入ろうな?」
「それはダメ」
「あっ・・・引っ掛からなかった・・・」
「だぁぁぁっ!!!家でやれ!!」
限界に達したヴィンセントは、自分から離れていった。自室に戻ったヴィンセントは、寝台に倒れ込み、枕に顔を埋めて大泣きした。自分は誰も褒めてくれない。誰も慰めてくれない。大丈夫よって抱きしめてくれない・・・ヴィンセントは大打撃を食らっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
【ヴィンセントside】
私だって頑張っている・・・
第一王子として、次期国王として立つために・・・頑張っている
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