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嫉妬三昧の執務室

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レティシアを片膝に乗せ、左手で抱きしめたまま執務をしているウィルフレッド。捗っているのかはわからないが、終始ご機嫌の様子。


「シア、キスしていい?」

「んっ」

「シア・・・もっとしたい・・・」

「終わったらね」

「はい・・・」


しばらくするとまた。


「シア、頭撫でて」

「はい、ヨシヨシ」

「元気出た!」


少し時間が経っては、また。


「シア、好きだよ」

「私もよ」

「・・・」

「ウィル?」

「好きって言って?」

「大好きよ?」

「んんんーー!!」


さっきからずっとこの様子だ。そして騎士達が執務室に訪れるたびにウィルフレッドが豹変する。



コンコンコン



「失礼します」


部下である騎士達が一人、また一人と来るたびに、レティシアを抱く手に力が入る。


「団長、書類提出に来ただけですから・・・」

「早く行け!」

「はいはい・・・」

「騎士様、ご苦労様です」

「えっ・・・は、はい!ありがとうございますっ、失礼します!」


バタン


騎士はレティシアに声をかけられ、頬をほんのり染めて退出していった。


「シア・・・俺以外の男に優しくするな・・・」


ウィルフレッドはレティシアをぎゅうぎゅうに抱きしめて懇願する。




「失礼します・・・団長、そんな殺気飛ばさないでくれます?今度の王宮での茶会の警備の件ですよ」

「副騎士団長に聞けばいいだろう?」

「団長に確認をと言われたのです」

「ちっ・・・」

「ウィル、感情で仕事をしてはダメよ」

「・・・あぁ・・・それで?何の確認なんだ?」

「ここの人員配置ですが・・・」


数回のやり取りの後、話がまとまったようだ。


「では、その様に」

「騎士様、ウィルのせいで迷惑かけてごめんなさいね」

「あっ、いえっ、だ、大丈夫れすっ、あっ、です!失礼します」


騎士が退出すると、ウィルフレッドはレティシアを両腕でしっかりと抱きしめ、肩に頭をぐりぐり押し付ける。


「ウィル?」

「シア・・・俺以外の男に笑顔を向けないでくれ・・・」


しばらくむくれたまま、肩に頭を押し付け甘えたウィルフレッドだった。





「失礼します、団長・・・あれ、お邪魔でした?」

「あぁ、邪魔だ出ていけ」

「ええぇぇ・・・」

「こら、ウィル。何も聞かずに追い払ったりしないの!・・・ごめんなさい、騎士様、要件は何かしら?」

「へっ?・・・あっ、えっと・・・書類の訂正箇所がありまして、第一騎士団より届けに参りました」

「ありがとうございます、預かりますね」


レティシアがウィルフレッドの膝に座ったまま書類に手を伸ばそうとする。瞬時に手首を掴まれ、目前にあった書類がひらりと取り上げられた。


「受け取った、行け!」

「はっ、はい・・・失礼しました!」


騎士は赤くなったり、青くなったり、忙しなく執務室を去っていった。


「シア・・・男に近付くな・・・危ないじゃないか・・・攫われてしまうぞ」


もう、なんだか悪影響しか出ていない気がするレティシアだった。




ーーーーーーーーーーーーーー


次回

【ウィルフレッドside】

もっとわがまま言ってみたくなってしまったんだよな




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