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泣き止んで落ち着いて
しおりを挟むウィルフレッドが膝枕で眠ってしまったかと思えば、怖い夢を見たらしく飛び起きた。わんわん泣いて、しばらくして落ち着いたらしい。
「シア、もう帰るのか?」
「えぇ、そのつもりだけど?」
「・・・ダメ」
「えっ?」
あっという間だった。気付けば全てを片付けて手にもたされたかと思うと、その状態でウィルフレッドに抱きかかえられていた。そして物凄い速さで歩いているらしい。
「ウィル、どこ行くの!?」
「・・・ついた」
話すが早いか目的地についたようだ。ウィルフレッドは自身の執務室に向かっていたらしい。ソファにレティシアをおろして座らせる。
「ここで待っててくれ」
「ここで?」
「終わるまで待っててくれ」
「ウィルが帰るまでって事?」
「そう、一緒に帰る」
「ウィル、一人で帰れるわよ?」
「ダメだ」
「どうして?」
「さっきみたいに男に囲まれたシアを見たら生きた心地がしない。見えている所でならどうとでもなるが、俺の知らない所で他の男に・・・うっ・・・考えただけで・・・うぐっ・・・嫌だ!」
これは誰なんだ・・・とレティシアは驚いた。でも、この男を元気にしてあげられるのも自分だけ。自分の事でこんなにも不安になり、そして一喜一憂する。
「わかった、待ってるわ。ここで待っていればいいのね?」
「あぁ」
「本当に?」
「?」
それ以外の選択肢が浮かばなかったウィルフレッドが困惑しているうちに、レティシアがすっと立ち上がった。
「シア!どこに行くんだ!待って、一緒に帰え・・・えっ?」
レティシアはウィルフレッドに歩み寄ると、足の間に入り、片膝に座った。
「ここがいいかな」
「・・・」
ウィルフレッドの思考が停止した。頭の中は、その選択肢は・・・なかった・・・だった。
「あら、嫌だった?」
「嫌じゃない!嫌なはずない!」
「ふふっ、仕事しないの?」
「す、する・・・する・・・けど・・・シア・・・」
「何?」
「左手が・・・寂しいな・・・」
「別に何もダメなんて言ってないわ」
「シア!大好きっ!」
ウィルフレッドは破顔すると、そっとレティシアの腰を抱き寄せた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
【ウィルフレッドside】
その上があったなんて・・・思いもしなかったな
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