91 / 544
デレる騎士団長
しおりを挟む「団長、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「何かいい事があったのですか?」
「えっ?・・・あぁ・・・顔に出ていたのか?」
「えぇ、かなり。にやけておいででしたよ」
「そ、そうか・・・なぁ、聞いてくれるか?」
「なんでしょう?」
「ふっふっふっ、婚約者になったシアに、行ってらっしゃいのキスをして貰ったんだ」
「そ、そうですか、それはよかったですね」
「朝から最高の気分だ」
ウィルフレッドは皆に惚気まくっていた。夜会に参加した全員が見ていた大暴露逆プロポーズ。翌日には王都中に広まっていた。あの夜会で二人が相思相愛であることは周知の事実となったが、レティシアの美しさと意志の強い凛とした姿が、かなりの令息のハートを射止めてしまったのも事実。そして夜会でレティシアに選んで貰ったことが嬉しくて、ボロボロ泣いてしまったウィルフレッドを見て、密かな恋を諦めた令嬢も多かった。一年もの間、毎日手紙を送り続け、彼女に振り向いて欲しいと必死だった事を大暴露されたウィルフレッドだったが、ロマンチックな話と王都中の令嬢達が羨ましがった。
婚約者がいない事で人気が集中しそうなものだが、何故か女性支持が減った第一王子ヴィンセント。残念王子と呼ばれているらしい。
騎士達に稽古をつけていると、少し離れたところに人だかりができていた。最初は、いつものごとく騎士達を見に来た令嬢がいて、皆が群がっているのだろうと思っていた。しかし、ウィルフレッドは見てしまった。騎士達に囲まれていたのは、待ち望んでいた愛しい婚約者レティシアだった。
ウィルフレッドは物凄い勢いで走り出すと、人だかりの直前で、持っていた模擬刀を地面に刺し、その勢いで宙に舞い、着地と同時にレティシアを抱き込んだ。
「きゃぁっ!?・・・うっ・・・ちょっと、ウィル、普通に登場してくれる?」
ウィルフレッドは、なんと人垣を飛び越えたのだ。
「ウィル?」
ウィルフレッドはレティシアの肩に頭を乗せているが、何も答えない。怒られているからではない。ただ・・・ただ震えていたのだ。
「ウィル、どうしたの?」
「・・・怖い」
「怒ったつもりじゃなかったんだけど?」
「違う・・・」
「じゃあ、どうしたの?」
「・・・男に囲まれたシアを見て、血の気が引いた」
「もう・・・そんなに怯えないで」
この一部始終を目の前で見ていた騎士達は、信じられないものを見たと唖然としていた。いつもは厳しい騎士団長。辺境から戻ると、稽古もより一層厳しくなった。今、目の前で女性に抱きつき震えているのを慰めて貰っているのは一体誰なんだと。
「騎士の皆様、驚かせてしまってごめんなさいね」
ウィルフレッドの頭を撫でながらレティシアが言う。
「ウィル、お昼にしましょう?あっちの中庭に行ってみたいんだけど」
「中庭?」
ウィルフレッドはおずおずと顔を上げる。
「膝枕して貰いたいんでしょう?」
レティシアの手には、ランチの入ったバスケットと敷物が見える。ウィルフレッドはレティシアを抱きかかえた。
「ちょ、ちょっとウィル!?」
そのまま歩き出し、騎士達は放置し足早に去って行った。その間にも、すれ違う騎士達が、何事かと思うほどウィルフレッドはご機嫌だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
次回
【ウィルフレッドside】
焦ったんだ
シアが取られる
シアが俺の元からいなくなるって
5
お気に入りに追加
331
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【完結】京都若旦那の恋愛事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
藍生蕗
恋愛
大学二年生、二十歳の千田 史織は内気な性格を直したくて京都へと一人旅を決行。そこで見舞われたアクシデントで出会った男性に感銘を受け、改めて変わりたいと奮起する。
それから四年後、従姉のお見合い相手に探りを入れて欲しいと頼まれて再び京都へ。
訳あり跡取り息子と、少し惚けた箱入り娘のすれ違い恋物語
フラグを折ったら溺愛されました
咲宮
恋愛
よくある乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったので、フラグを折る為に隣国へ留学します!!
只の留学の筈だったのに、いつの間にか溺愛されているのは何故なのでしょうか。
→1巻【婚約破棄編】
怒涛の日々を越え、新たな肩書きと共に再びゼロ国へと足を踏み入れることができました。
とは言ったものの、その肩書き──国王の婚約者は当分しまっておいて大丈夫なようです。様々な課題を置きながらも、まずは当初の目的であった留学の役目を果たすことになりました。
専門学校にて舞踊を学ぶ筈だったのに、校内にまで溺愛がやまないのは何故なのでしょうか。
→第二部【専門学校編】
完結しました!
※更新不定期です。
※誤字脱字の指摘や感想よろしければお願いします。
※登場人物紹介、今更ですが作りました!容姿について何も触れてなかったので、ここで触れておこうと思います。ネタバレにならないようにはしてます。
※内容紹介変更しました!
初めて本気で恋をしたのは、同性だった。
芝みつばち
恋愛
定食屋のバイトを辞めた大学生の白石真春は、近所にできた新しいファミレスのオープニングスタッフとして働き始める。
そこで出会ったひとつ年下の永山香枝に、真春は特別な感情を抱いてしまい、思い悩む。
相手は同性なのに。
自分には彼氏がいるのに。
葛藤の中で揺れ動く真春の心。
素直になりたくて、でもなれなくて。
なってはいけない気がして……。
※ガールズラブです。
※一部過激な表現がございます。苦手な方はご遠慮ください。
※未成年者の飲酒、喫煙シーンがございます。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる